融資マニュアル
3.融資を申し込む前に注意するポイント(資本金)
融資を確実に獲得するためには会社を設立する段階から戦略性を持って登記することが必要となります。
登記の際に具体的に注意すべき箇所は、
1、本店所在地
2、事業目的
3、資本金
4、役員の登記
5、個人情報・設立登記に関する事項
です。
ここでは、設立の時に「資本金」を決めるうえで注意すべきポイントを記載します。
この記事に関する目次
3.資本金
資本金は自己資金として扱われる部分であり、基本的には資本金が大きい程、財務の安全性が高いと認識され、金融機関の評価は高くなります。
(1) 会社設立の資本金は「見せ金」で設立しない
会社設立の資本金は「見せ金」で設立してはなりません!
「見せ金」とは他人からお金を借りる等して通帳に入金し、その資金をもって法人登記の際に資本金として登記し、当日または数日後(数週間後)に口座から引き出し返金したお金のことです。
見せ金で会社を設立した経営者の多くは
①「会社を設立しよう」
②「資本金に充当できる資金がない」
③「資本金を他人や他所から借りて設立してしまおう」
と安易に考えてしまい会社を設立しています。
そして「見た目は資本金が多いので財務の安全性が高いと思われ融資を受けやすいのでは」と考えしまいます。
この状況で融資を申込をしても金融機関が資本金を「見せ金」で設立したと判断した場合、悪質とみなされ数年にわたり融資に取り組んでくれません。
理由は、
そもそも、資本金は本来事業運営する上での元手であるにも関わらず、その資金が設立の為だけに使われ実際には事業運営に使われていないという事が問題だからとなります。
また、見せ金は会社法第52条の2からと公正証書原本不実記載等罪に問われる可能性からも違法といえます。
違法な手続きで設立した会社に対して金融機関としては当たり前ですが融資は出来ないので数年にわたり融資は厳しくなることは覚悟が必要です。
ちなみに、創業融資の場合、設立時の資本金の経緯は確認されますので注意が必要です。
(2) 借入金は資本金として利用できない
資本金は会社の資産ですので、返済の義務がある借入金を資本金にすることはできません。
借入で設立しているので返金しなければならない資本金としては実態がないからになります。
そもそも資本金とは負債と異なり返済義務のない資金であることから返済義務のある借入金を資本金にすることはできないです。
(3) 資本金の金額の考え方
資本金があまりにも少額での設立では、日本政策金融公庫も信用保証協会も、財務安全性が低いとして、融資に取り組んでくれないと思っていただいた方が良いと思います。
「資本金1円で起業する方法」が言われていますが、融資の考え方と単なる会社設立だけの考え方は異なりますので注意が必要です。
ちなみに、法人設立登記費用や事務所を借りる場合の費用も見込んで設立時の資本金としておくと、後々、経費処理悩まないですみます。
また、日本政策金融公庫の新規開業資金は
①融資限度額を7,200万円(うち運転資金4,800万円)に増額
②運転資金は原則10年以内と変更
③据置期間5年以内に延長
④創業資金総額の10分の1以上の自己資金があることなどの条件の撤廃
など創業・スタートアップ向け融資制度としては良い方向に向いていると思います。
しかしながら、現実的に創業時に50万円の資本金で500万円の融資を獲得した企業はあまりありません。
また、拡充前の日本施策金融公庫の融資制度で創業時に運転資金として融資要件を満たしても3,000万円(運転資金:1,500万円)の満額借入れられた例は少なく、凡そ無担保の場合最大でも800万円~1,000万円が融資限度額だと考えています。
そもそも、日本政策金融公庫(国民生活事業)の1社あたりの平均融資残高が935万円(令和4年度末)ですので、創業時の運転資金と融資満額4,800万円は考えずらいです。
通常、融資の現場の人間の感覚では資本金の額×2倍~3倍程度までが実際に創業融資を出せる額と考えています。
確かに、事業計画書や経験、事業の着手状況を勘案して資本金の何倍も融資が出るケースもありますが稀なケースです。
融資の審査する担当者も初めて取引になる融資には慎重になりますので、会社経営者も融資が希望額満額取れる前提で資金調達計画を考えると、事業計画そのものに狂いを生じ大変なことになります。
このあたりの、資金面でのリスクヘッジの考えも経営者としては必要なスキルだと思います。
事業を運営する際には資本金の2倍~3倍程度を目安に、融資資金の調達を考えた方が事業運営上安全だと思います。
ちなみに、計画自体の見直しで済めば良いですが、融資が前提の過大な事業計画ではNGのケースもありえますので、創業時の計画はあらゆる角度から慎重にされるのが良いでしょう。
(4) 資本金の金額の注意点
融資においては自己資金が多い程、融資が実行されやすいことは事実です。
しかし、現在の税制では、資本金が1,000万円超えると消費税の課税対象事業所になり、初年度から消費税を支払わなければなりません。
資本金が1,000万円未満であれば会社設立時より2期間(設立第1期及び第2期)は免税事業者になりますので、最初は1,000万円未満の資本金で設立するのがおすすめです。
また、資本金が1,000万円以上になると決算時に支払う法人住民税の均等割が高くなることもあり負担が大きくなります。
また、2年目も消費税が免除となる条件は資本金1,000万円未満かつ以下の条件のいずれかの場合となります。
設立から6か月間の課税売上高が1,000万円若しくは給与等支払額の合計額が1,000万円を超えない場合には、2年目も引き続き納付が免除されます。
①特定期間の課税売上高が1,000万円超、給与等支払額の合計額は1,000万円以下:2年目の消費税も免税となります。
②特定期間の課税売上高は1,000万円以下、給与等支払額の合計額は1,000万円超:2年目の消費税も免税となります。
なお、「消費税課税事業者選択届出書」とは、消費税の免税事業者があえて課税事業者になるために提出する申請書類のことです。
ちなみに、資本金の額が少ないからといって、安易に友人や親族からの借入で処理すると、後々、融資を申込を行う場合の障害になる可能性があります。
借入れで処理すると、「すでに借入れをしているため融資が不要ではないのか?」「その借入を返済する為に融資を受けるのが目的でないか?」と金融機関に判断され、融資を受けれない可能性が大きいからです。
(5) 資本金の払い込み方法
一般的な資本金の払込方法は以下の通りですが、会社設立はご自身でされるより司法書士などの専門家に頼むことが間違えもなく早いです。
①資本金を代表者になる方の口座に振込若しくは銀行窓口で入金処理をします。
②通帳の表紙と見開き、振込ページ(金額が載っているページ)をコピー
②払込証明書を作成して上記②を添付します。
④添付した書類の継ぎ目に会社代表印を押印し割り印をします。
⑤法人の設立が完了し金融機関で法人名義の口座開設が完了しましたら、資本金の金額を自分名義の通帳から法人名義に振替ます。
※なお、既に法人設立にあたり、法人の設立完了前に費用等を使っていた場合には残額を自分名義の通帳から法人名義に振替ることで大丈夫です。
(6) 会社設立時に必要な届け出
会社設立時に必要な届け出は
①法人設立届出書(会社設立後2か月以内)
②青色申告の承認申請書(会社設立後3ヶ月以内)
③給与支払い事務所等の開設届出書
④源泉徴収税の納期の特例の承認に関する申請書
⑤棚卸資産の評価方法の届出書
⑥減価償却資産の償却方法の届出書
※①②は期限内に速やかに手続きが必要です。
(7) まとめ
資本金は1円からでも会社設立は可能です。しかしながら、基本的には資本金が大きいほど財務の安全性が評価され金融機関に融資を申込を行った場合にも有利に働きます。
資本金の金額を検討するときも、資本金の金額が1,000万円以上か未満かで税金(消費税の課税事業者になるか、免税事業者になるか)の負担も変わります。
また、建設業など許認可が必要な事業を行う場合には財産的要件として資本金が重要になる可能性もありますので注意が必要です。
資金繰りが厳しく、資金調達の準備が必要、自社に合った融資制度を知りたい、
手続きが難しそうで進める自信がないなど
元銀行員が融資獲得まで
サポートします!
- 資金繰りが厳しく、資金調達の準備をしなければ心配。
- 自分に合った融資制度を知りたい。
- 手続きはが難しそうで、自分ではなかなか進められない。
元銀行員が融資獲得まで
サポートします!
- 資金繰りが厳しく、資金調達の準備をしなければ心配。
- 自分に合った融資制度を知りたい。
- 手続きはが難しそうで、自分ではなかなか進められない。