創業融資の面談で聞かれる質問と対策ガイド
創業融資の面談では、事業計画の実現可能性と返済能力が問われます。
審査担当者は、表面的な数字だけでなく事業への理解度、経験、リスク対応力を見極めようとしています。
本記事では、面談時に頻出する質問とその背景にある意図を解説し効果的な回答方法をご紹介します。
適切な準備と説得力のある回答で融資獲得の可能性を高めましょう!
この記事に関する目次
1. 創業の動機・目的について
(1) 創業の動機
①質問例:「この事業を始めようと思った理由や具体的なきっかけを教えてください。」
②審査の意図:なぜこの事業に取り組むのか、その熱意と理由を確認しています。
感情的な動機だけでなく、市場ニーズの分析に基づいた判断があるかを見ています。
③回答のポイント
・業界経験から見つけた市場の課題
・具体的な顧客ニーズの発見
・自分の強みを活かせる事業分野であること
(2) 事業を通じて提供する価値
①質問例:「この事業を通じて、お客様や社会にどのような価値を提供したいですか?」
②審査の意図:事業の社会的意義と収益性が両立するかを評価しています。
明確な価値提供ができる事業は持続的に成長する可能性が高いと判断されます。
③回答のポイント
・解決する具体的な顧客の問題点
・その解決策がもたらす具体的なメリット
・収益を上げながら社会貢献できる仕組み
2. 事業経験と強みについて
(1) 関連する職務経験
①質問例:「この事業に関連する仕事の経験について教えてください。どんな立場で何年くらい経験されましたか?」
②審査の意図:事業を運営するための十分な経験や知識を持っているかを確認しています。
単なる経験年数より、実際に身につけたスキルを重視しています。
③回答のポイント
・業界での具体的な役割と成果
・担当した業務と習得したスキル
・数字で示せる実績(売上に対する寄与、顧客獲得数など)
(2) 事業に活かせるスキル
①質問例:「その経験の中で、今回の事業に直接活かせるスキルやノウハウは何ですか?」
②審査の意図:強みが事業成功にどうつながるかを評価しています。
失敗から学んだ教訓は高く評価されます。
③回答のポイント
・技術的なスキルや専門知識
・人脈や業界内のネットワーク
・成功体験と失敗から学んだ教訓
(3) 経験不足のカバー方法
①質問例:「業界経験が浅い部分は、どのようにカバーしていく予定ですか?」
②審査の意図:自分の弱点を認識し、それを補う具体的な方法があるかを確認しています。
問題解決能力の高さを評価しています。
③回答のポイント
・不足しているスキルの明確な認識
・外部専門家や協力者の活用計画
・自己学習や研修の具体的な計画
3. 個人の信用情報・生活状況について
(1) 現在の借入状況
①質問例:「現在、住宅ローンや他の借入れはありますか?毎月の返済額はいくらですか?」
②審査の意図:返済能力と信用状況を確認しています。
追加の融資を返済できる余力があるかを見ています。
③回答のポイント
・原則、正直に借入を開示する(個人の通帳の持参を求められるため引き落とし状況などは分かってしまいます)
・返済状況が良好であることを伝える
・新規の返済負担に耐えられる収支計画を示す
(2) 自己資金の調達方法
①質問例:「自己資金はどのように準備されましたか?」
②審査の意図:資金管理能力と事業への本気度を評価しています。
計画的に資金を貯めてきた人は、事業計画も実現できる可能性が高いと判断されます。
③回答のポイント
・計画的な貯蓄の経緯
・預金通帳など証明できる資料の提示
・事業への投資意欲と覚悟を示す
4. 商品・サービスについて
(1) 事業内容と収益モデル
①質問例:「主力となる商品やサービスの特徴やビジネスモデルを説明してください。」
②審査の意図:商品・サービスの市場性と収益性を評価しています。
具体的な数字に基づく説明ができるかどうかが重要です。
③回答のポイント
・商品・サービスの具体的な内容と価格設定
・顧客にとっての明確なメリット
・売上・利益が発生する仕組み
(2) 競合との差別化
①質問例:「競合と比べて、どのような点で優れていますか?なぜお客様はあなたの商品を選ぶのでしょうか?」
②審査の意図:市場での競争力と事業の持続可能性を評価しています。
一時的ではなく、長期的に維持できる強みがあるかを見ています。
③回答のポイント
・価格、品質、利便性などの具体的な差別化ポイント
・競合が真似しにくい独自の強み
・顧客からの評価や反応の具体例
5. ターゲットと販売戦略について
(1) ターゲット顧客
①質問例:「どのようなお客様をターゲットにしていますか?」
②審査の意図:市場理解の深さと顧客ニーズの把握度を評価しています。
曖昧なターゲット設定は事業リスクとみなされます。
③回答のポイント
・年齢、性別、職業、所得などの具体的な属性
・ターゲットが抱える具体的な課題やニーズ
・市場規模とターゲット層の購買力
(2) 集客・販売方法
①質問例:「どのようにして商品やサービスを知ってもらい、購入につなげますか?」
②審査の意図:マーケティング戦略の実現可能性と費用対効果を評価しています。
特に顧客獲得コストと収益のバランスが重視されます。
③回答のポイント
・具体的な広告媒体と宣伝方法
・SNSやウェブサイトの活用計画
・集客から成約までの具体的なプロセス
・費用対効果の試算
(3) 既存の販売先
①質問例:「すでに取引が見込める販売先はありますか?」
②審査の意図:売上計画の確実性を評価しています。
特に創業初期の売上見込みが現実的かどうかを重視しています。
③回答のポイント
・具体的な取引先名と取引見込み額
・商談の進捗状況や証拠(メールのやり取りなど)
・既存の人脈や関係を活かした販路開拓計画
6. 仕入・外注について
(1) 仕入先の選定
①質問例:「仕入先はどこですか?なぜその仕入先を選びましたか?」
②審査の意図:仕入れの安定性とコスト管理能力を評価しています。
創業初期における仕入条件の現実性を重視しています。
③回答のポイント
・具体的な仕入先と選定理由
・価格、品質、納期などの取引条件(契約書等があれば尚可)
・取引開始の見込みや既存の関係性
(2) 代替仕入先
①質問例:「もしその仕入先から仕入れができなくなった場合、代わりの仕入先はありますか?」
②審査の意図:リスク対応能力を評価しています。
単一の仕入先に依存している場合は、事業継続性に懸念があると判断されます。
③回答のポイント
・複数の代替仕入先の具体名
・各社の比較(価格、品質、納期など)
・切り替えにかかる時間やコスト
(3) 外注先と費用
①質問例:「外注先はどこですか?どんな業務を頼み、費用はいくらですか?」
②審査の意図:外部リソース活用の合理性と管理能力を評価しています。
外注費用の妥当性と品質管理体制が重視されます。
③回答のポイント
・外注する業務の具体的な内容
・外注先の選定理由と品質管理方法
・費用の内訳と市場相場との比較
7. 事業の運営体制について
(1) 従業員の必要性と役割
①質問例:「従業員を雇用する計画がありますが、なぜ必要で、どんな役割を担いますか?」
②審査の意図:人材計画の合理性と人件費計画の妥当性を評価しています。
創業期における適正な人員配置が重視されます。(日本政策金融公庫の創業支援貸付利率特例制度の利用が検討可能です。)
③回答のポイント
・従業員の具体的な業務内容と必要な理由
・給与水準の根拠と市場相場との比較
・採用計画と教育方法
(2) 許認可の取得状況
①質問例:「事業に必要な許認可は取得済みですか?」
②審査の意図:法令遵守体制と事業開始の実現可能性を評価しています。
許認可取得の障壁が高い場合は事業リスクとみなされます。
※必要許認可を未取得の場合、取得できるまで融資が厳しい場合が多いです。
③回答のポイント
・必要な許認可の種類と取得状況
・未取得の場合は取得予定時期と手続き状況
・取得のための要件と自社の充足状況
8. 必要な資金(使いみち)について
(1) 融資希望額の内訳
①質問例:「融資希望額の具体的な使い道を教えてください。」
②審査の意図:資金使途の妥当性と投資効果を評価しています。
過大な設備投資や不明確な運転資金は審査上のマイナス要因になります。
③回答のポイント
・設備資金と運転資金の明確な区分
・各項目の具体的な金額と必要性
・見積書や価格表などの裏付け資料
(2) 運転資金の詳細
①質問例:「運転資金は具体的に何に、何か月分を想定していますか?」
②審査の意図:資金繰り計画の精度と現実性を評価しています。
売上が安定するまでの期間の資金需要を適切に見積もっているかが重視されます。
③回答のポイント
・仕入資金、人件費、家賃などの具体的な内訳
・月ごとの必要額と何か月分かの明確な説明
・黒字化するまでの期間を見据えた計画
9. 売上計画の根拠について
(1) 売上高の算出方法
①質問例:「売上高の見込みはどのように算出しましたか?」
②審査の意図:売上計画の精度と根拠の合理性を評価しています。
具体的な根拠に基づいた積み上げ式の予測が高く評価されます。
③回答のポイント
・客単価×客数×営業日数などの具体的な計算式
・類似業種や前職経験からの参考データ
・地域特性や季節変動の考慮
(2) 売上目標の達成可能性
①質問例:「この売上目標は達成できると考える具体的な理由を教えてください。」
②審査の意図:売上計画の現実性と市場環境の理解度を評価しています。
過度に楽観的な予測は事業計画全体の信頼性を損なうため注意が必要です。
③回答のポイント
・市場規模とシェア獲得の見込み
・既存の顧客基盤や商談状況
・同業他社の実績との比較
(3) 売上未達時の対応
①質問例:「もし売上が計画の8割だった場合、資金繰りはどうなりますか?」
②審査の意図:リスク認識の適切性と危機対応能力を評価しています。
売上未達時の具体的対応策がない場合は、事業継続性に懸念があると判断されます。
③回答のポイント
・現実的な資金繰り予測(月次ベース)
・削減可能な経費項目と削減額
・追加資金調達の方法
10. 経費・利益計画の根拠について
(1) 原価の根拠
①質問例:「売上原価(仕入)の根拠を教えてください。」
②審査の意図:収益構造の安定性と原価管理能力を評価しています。
特に、原価率が業界平均と大きく違う場合は、その理由を確認します。
③回答のポイント
・具体的な仕入価格や原材料費の内訳
・原価率の計算方法と業界標準との比較
・数量割引などコスト削減の取り組み
(2) 経費の内訳と根拠
①質問例:「家賃、人件費、水道光熱費、広告宣伝費など、経費の算出根拠を教えてください。」
②審査の意図:経費計画の精度と管理能力を評価しています。
経費を過小評価していないか、固定費と変動費をきちんと区別しているかを確認します。
③回答のポイント
・物件の家賃相場と契約条件
・人件費の内訳(給与、社会保険料、賞与など)
・水道光熱費の使用予測
・広告宣伝費の媒体別予算
・同業他社や業界標準との比較
(3) 支払サイトの設定
①質問例:「支払いサイト(締め日・支払日)はどのように設定しますか?」
②審査の意図:実務的な資金繰り管理能力を評価しています。
特に創業初期は入金より支払いが先行するため、そのギャップをどう埋めるかを確認します。
③回答のポイント
・取引先との具体的な支払・回収条件
・資金ショートを防ぐ対策
・業界の一般的な取引慣行との整合性
11. 返済計画とリスク管理について
(1) 返済原資の確保
①質問例:「収支計画で出た利益から毎月の返済が可能である根拠を説明してください。」
②審査の意図:返済能力を具体的に評価しています。
(必要許認可を未取得の場合、取得できるまで融資が厳しい場合が多いです。
創業初期の返済負担が過大でないか、安定的に返済できる見込みがあるかを確認します。
③回答のポイント
・月次の収支から導き出される返済可能額
・返済額が月商や月次利益に占める割合
・資金繰り表での返済計画の明示
(2) 業績未達時の対応策
①質問例:「計画通りに売上が上がらなかった場合、どのように対応しますか?」
②審査の意図:経営危機への対応能力を評価しています。
売上未達を前提とした具体的なコスト削減策と資金繰り対策があるかを確認します。
③回答のポイント
・削減可能な経費項目と具体的な削減額
・追加的な営業施策
・資金繰り改善策(回収促進・支払延期など)
(3) 最悪の場合の対応策
①質問例:「最悪の場合、返済が困難になったらどうしますか?」
②審査の意図:最終的なリスクヘッジ策の有無を評価しています。
経営者自身が最悪の事態を想定し、その対応策を具体的に検討しているかを確認します。
③回答のポイント
・個人資産からの追加出資可能性
・事業の縮小や方向転換の選択肢
・家族や関係者からの支援可能性
12.審査担当者が重視するポイント
審査担当者は以下の5つの観点から総合的に評価します:
(1)事業の実現可能性:市場ニーズがあり、収益が見込める事業か
(2)経営者の資質:必要な知識・経験・熱意があるか
(3)計画の精度:売上・費用の見込みが現実的で根拠があるか
(4)返済能力:計画通りに進まなくても返済できる余力があるか
(5)リスク対応力:問題発生時の対応策が具体的か
13.融資審査を成功させるためのコツ
(1)数字に根拠を持たせる:「なぜその数字なのか」を説明できるようにする
(2)現実的な計画を立てる:過度に楽観的な計画ではなく、堅実な計画を示す
(3)リスクを自分から示す:想定されるリスクとその対応策を自ら説明する
(4)証拠資料を用意する:市場データ、見積書、取引証明など具体的な資料を揃える
(5)一貫性を保つ:事業計画書と面談での説明に矛盾がないようにする
14.まとめ
融資審査では、事業計画の内容だけでなく御自身の理解度や説明能力も重要です。
この記事で紹介した質問への回答を事前に準備し、自信を持って説明できるようにしておきましょう。
また、融資審査は単なる資金調達の手段ではなく、自社の事業計画を見直す貴重な機会でもあります。
審査担当者からの質問や指摘を参考に、より強固な事業計画に磨き上げることで、事業成功の確率も高まります。
融資審査に臨む際は、緊張せず、自分の事業への熱意と準備の深さを素直に伝えることが大切です。
ご自身の経験、事業の将来性と返済能力を具体的に示すことができれば、融資獲得の可能性は大きく高まるでしょう。
資金繰りが厳しく、資金調達の準備が必要、自社に合った融資制度を知りたい、
手続きが難しそうで進める自信がないなど
元銀行員が融資獲得まで
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- 資金繰りが厳しく、資金調達の準備をしなければ心配。
- 自分に合った融資制度を知りたい。
- 手続きはが難しそうで、自分ではなかなか進められない。
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