コロナ禍で3度の追加融資!年商3億円美容院が銀行から資金を引き出し続けた「先読み経営」の全技術

「先生、街から人が消えました。このままでは全店舗潰れてしまいます…」
華やかな港区で複数の美容院を展開し、順風満帆に見えたD社の社長から、悲痛な連絡が入ったのは、最初の緊急事態宣言が囁かれ始めた頃でした。
月商2,800万円を誇った事業が、コロナという見えない敵の前に存続の危機に瀕していたのです。
この記事を読めば、最悪の状況下でも先手を打ち、複数回の追加融資を成功させた具体的な戦略が分かります。
この記事に関する目次
1. 相談企業の概要と財務状況:華やかさの裏に潜むリスク
D社は、東京都港区を中心に複数の美容院を経営する、年商約3億円の企業です。
創業時に日本政策金融公庫などから約4,000万円を調達し、その後も順調に店舗を拡大。
まさに成功企業のモデルケースと言える存在でした。
しかし、元銀行員の私から見ると、その成長モデルには一つのリスクが潜んでいました。
それは、「高い固定費体質」です。
都心の一等地に出店しているため、店舗の家賃や人件費は莫大です。
売上が順調な時は問題ありませんが、ひとたび外部環境が急変し売上が落ち込むと、この高い固定費が一気に経営を圧迫します。
B/S(貸借対照表)を見ても、店舗展開のための借入金は決して少なくない金額でした。
財務体質は悪くありませんが、売上というエンジンが止まれば、あっという間に資金繰りが厳しくなることは明らかでした。
2. 経営課題と融資の必要性:売上8割減という悪夢
新型コロナウイルス感染症は、D社の経営を根底から揺るがしました。
緊急事態宣言により人通りが途絶え予約のキャンセルが相次ぎました。月間2,800万円あった売上は、わずか2割まで落ち込むという悪夢のような事態に陥ったのです。
しかし、お客様が来なくても店舗の家賃や正社員の給与は毎月発生します。
売上という収入が激減する一方で、支出は変わらない。キャッシュは見る見るうちに溶けていきました。「このままでは、会社がもたない」
D社にとって急務だったのは、この未曾有の危機を乗り越え、事業を存続させるための「戦略的な運転資金」の確保でした。
3. 当初の計画と見過ごされた問題点(元銀行員だから話せる本音)
「コロナがいつまで続くか分からず、いくら借りればいいのかも分かりません…」
最初に相談を受けた時の社長は、先の見えない不安に苛まれていました。多くの経営者がそうであったように「とにかく貸してほしい」という状態でした。
しかし、元銀行員だから話せますが銀行は「不安だ」という感情には1円も貸しません。
銀行が融資を決断するのは、その不安が「具体的な数字」に翻訳され、「返済できるという論理的な未来」が示された時だけです。
もしD社が、何の準備もなしに「売上が減って大変なんです」と銀行の窓口に駆け込んでいたらどうなっていたでしょう。
おそらく「大変なのは皆さん同じです。具体的な計画を持ってきてください」と丁重に追い返されていたはずです。
4. 改善指導と事業計画の磨き込み:不安を「最強の武器」に変える
私は社長と共に漠然とした不安を銀行を説得するための「最強の武器=事業計画書」へと磨き上げる作業に着手しました。
改善ポイント1:最悪シナリオの策定
まず「夏には収束するだろう」といった甘い見通しを全て捨て「コロナ禍は最低でも9ヶ月続く」という悲観的なシナリオを策定しました。
①2020年4月~6月:売上前年比80%減
②2020年7月~9月:売上前年比50%減
③2020年10月~12月:売上前年比30%減
改善ポイント2:必要資金額の「見える化」
この売上計画と、家賃や人件費などの固定費を基に、詳細な資金繰り表を作成しました。
すると、「このシナリオだと、〇月にはキャッシュがマイナス〇円になる」という事実が浮かび上がります。
これにより「だから、期間中の赤字を補填するために1億2,000万円が必要なのです」という、誰もが納得するロジックが完成しました。
改善ポイント3:審査担当者のための「おもてなし資料」
金融機関には融資申込が殺到していました。そこで、多忙な担当者が一目で理解できるよう、試算表、事業計画書、資金繰り表を完璧な形でパッケージ化。
この「稟議が書きやすい資料」を用意する一手間が、審査のスピードを大きく左右するのです。
5. 銀行面談のシミュレーションとアピール戦略:先手必勝の交渉術
周到な準備ができたことで、銀行面談での戦略は非常にシンプルになりました。
「お願い」ではなく、「提案」です。
銀行員Q:「大変な状況は分かりますが、なぜこれほどの金額が必要なのですか?」
社長A:「お配りした資金繰り表の3ページ目をご覧ください。最悪のシナリオでシミュレーションした結果、この金額がなければ事業継続が不可能になります。全ての根拠はこの資料にまとめてあります。」
銀行員Q:「多くの申し込みが来ており、審査に時間がかかりますが…」
社長A:「承知しております。だからこそ、私たちが一番乗りで、ここまで完璧な資料を準備いたしました。担当者様が稟議書を作成する上で必要な情報は、全てこの中にあります。どうか、迅速なご判断をお願いいたします。」
6. 融資審査の結果と成功のポイント:3度の危機を乗り切った資金調達
D社の「先読み」と「周到な準備」は、驚くべき結果を生み出しました。
第一弾:初動の速さで1億3,000万円を確保
緊急事態宣言と同時に資料を提出したことで、競合他社に先駆けて資金を確保しました。
①日本政策金融公庫(新型コロナウイルス感染症特別貸付):4,000万円
②民間銀行(セーフティネット保証4号):8,000万円
③港区制度融資:1,000万円
第二弾:状況変化に対応し、借換と追加融資を実行
コロナ禍が長引くと見るや、すぐに計画を再検討。街に人が戻り始めた状況(売上前年比70%)を反映した新たな資金繰り表を作成し、銀行に再相談しました。
①日本政策金融公庫:2,000万円の追加融資
②民間銀行:東京都の無利子制度を活用し、1億円の借換
これにより、金利負担を抑えつつ、さらなる手元資金を確保することに成功しました。
第三弾:攻めの姿勢で「伴走支援型保証」2,000万円を調達
ワクチン接種が進み日常が回復しつつある中でも、決して油断せず、「念のため」の資金として追加融資を打診。
銀行との継続的な対話と経営改善への姿勢が評価され、伴走支援型保証での調達が実現しました。
これは、金融機関が企業の経営改善に継続的に関与することを条件とする保証制度で、銀行との信頼関係の証とも言えます。
7. まとめ:この事例から全経営者が学ぶべき教訓
D社の事例は、危機的状況を乗り越えるための普遍的な教訓に満ちています。
(1)危機対応は「先手必勝」。周りが気づく前に動き出すことが全てを決める。
(2)漠然とした不安は、具体的な「数字」に落とし込むことで武器に変わる。
(3)事業計画書と資金繰り表は、銀行員を味方につけるための最強のプレゼン資料である。
(4)利用できる公的制度(公庫、保証協会、自治体融資)は全て研究し、組み合わせて活用する。
(5)一度資金調達して終わりではない。状況変化に応じて計画を見直し、銀行と対話し続けることが重要。
(6)審査担当者の手間を減らす「おもてなし資料」を準備する意識が、結果を左右する。
(7)守りだけでなく、時には「念のため」という攻めの資金調達も必要。
8.アクションプラン
あなたの会社を不測の事態から守るために、今すぐこの3つのアクションを始めてください。
(1)自社の決算書と、向こう1年間の資金繰り表を作成してみる。まずは会社の健康状態を正確に把握しましょう。
(2)売上が30%、50%減少した場合の「悲観シナリオ」シミュレーションを行う。これが会社の耐久力を知るためのストレステストになります。
(3)顧問税理士や専門家に、作成した資金繰り表を見てもらい、客観的な意見を求める。第三者の視点が、自社では気づけないリスクを教えてくれます。
危機は常に、準備不足の会社から襲いかかります。「備えあれば患いなし」。
あなたの会社の未来のために、今すぐ行動を起こしましょう。
資金繰りが厳しく、資金調達の準備が必要、自社に合った融資制度を知りたい、
手続きが難しそうで進める自信がないなど
元銀行員が融資獲得まで
サポートします!
- 資金繰りが厳しく、資金調達の準備をしなければ心配。
- 自分に合った融資制度を知りたい。
- 手続きはが難しそうで、自分ではなかなか進められない。
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