赤字決算でも融資は可能!黒字から一転、資金繰り悪化のIT企業が3,000万円を調達した事業計画書の書き方

「先生、前期までは黒字だったんです。攻めの経営が裏目に出るとは…」
私の元に駆け込んできたのは、都内でシステム開発業を営むE社の社長でした。
業績好調を背景に、未来への投資として人材を採用した矢先、顧客のシステム投資控えという逆風が直撃。
黒字から一転、半期で赤字に転落し資金繰りに窮しているというのです。
これは、順調な時ほど陥りやすい罠です。
この記事を読めば、その危機を乗り越えるための具体的な方法が分かります。
この記事に関する目次
1. 相談企業の概要と財務状況:優良企業に忍び寄る影
E社は、2006年に設立された業歴16年、年商5億円のシステム開発会社です。
大手システム会社出身の社長が立ち上げ、特に通信会社向けのシステム構築に強みを持っています。
優秀なエンジニアを多数抱え、ハードからソフトまで一気通貫で開発できる体制は、銀行からも高く評価されていました。
事実、コロナ禍の2020年12月期決算においても、しっかりと利益を確保。
決算書を見る限り、まさに「優良取引先」そのものでした。
しかし、元銀行員の私は、その決算書の裏に潜むリスクを見逃しませんでした。
それは、先行投資として採用した人材による「損益分岐点の上昇」です。
人件費という固定費が増えたことで、以前と同じ利益を出すためには、より多くの売上が必要になる体質に変わっていたのです。この変化こそが、E社を苦しめる引き金となりました。
2. 経営課題と融資の必要性:攻めの投資が招いた資金繰り悪化
E社の経営課題は、まさに「好事魔多し」を地で行くものでした。
課題1:顧客のシステム投資控えによる売上減少
課題2:先行採用した人件費という固定費の増大
この二つの逆風が同時に吹き荒れ、E社の資金繰りを急速に悪化させました。
前期まで黒字だった会社が、わずか半年で赤字に転落。このままでは、手元のキャッシュが枯渇し、黒字倒産しかねない危険な状態でした。
E社が必要としていたのは、単なる赤字補填の資金ではありません。
市況が回復するまでの間、未来への投資である優秀な人材と事業基盤を守り抜くための「戦略的な運転資金」でした。
社長が弾き出した希望額は、3,000万円。
この資金があれば、最悪の事態を乗り越え、必ずV字回復できるという算段でした。
3. 当初の計画と見過ごされた問題点(元銀行員だから話せる本音)
「前期まで黒字でしたし、事情を話せば銀行も分かってくれるはずです」
最初に相談を受けた際、社長はまだ少し楽観的な見通しを持っていました。
長年、銀行と良好な関係を築いてきたという自負もあったのでしょう。
しかし、元銀行員だからこそ、私は厳しい現実をお伝えしました。
「社長、その考えは非常に危険です。銀行は過去の実績よりも未来の返済可能性を何倍も重視します。」
銀行の担当者は、稟議書にこう書かなければなりません。
「E社は現在赤字ですが、この計画通りに進めば〇ヶ月後には黒字化し、融資の返済は全く問題ありません」と。
その根拠となるロジカルな説明がなければ、担当者がいくら「E社を助けたい」と思っても支店長の決裁は絶対に下りないのです。
4. 改善指導と事業計画の磨き込み:「反省」と「未来」を語る計画書へ
私は社長と共に、単なる状況説明に過ぎなかった計画を、銀行が「支援したい」と思える事業計画書へと磨き込みました。
改善ポイント1:赤字原因の徹底的な自己分析
「コロナの影響で…」という他人事のような表現を一切やめました。
代わりに、「どの顧客の、どの案件が、なぜ延期になったのか」「市況の変化に対する自社の見通しがどう甘かったのか」をリスト化し真摯な反省の弁として計画書の冒頭に記載しました。
改善ポイント2:売上回復の具体的なアクションプラン
「景気が回復すれば…」という希望的観測を捨て、具体的な行動計画に落とし込みました。
①延期案件の顧客に対する、再開時期のヒアリングと代替案の提示
②既存顧客への保守・運用といったアップセル提案
③新規採用した人材のスキルを活かせる、新たな市場へのアプローチ戦略
改善ポイント3:資金使途と返済計画の明確化
3,000万円の資金使途を、「人件費〇ヶ月分」「外注費〇ヶ月分」といった形で詳細に分解。そして、上記の売上回復計画に基づいた精緻な資金繰り表を作成し「この融資があれば、最悪のシナリオでも〇ヶ月は事業を継続でき、その間に必ず黒字化を達成します」と力強く宣言できる資料を完成させました。
5. 銀行面談のシミュレーションとアピール戦略:守りから攻めへの転換
完璧な計画書を手に、銀行面談に臨みました。
これは、単なる資金繰りの相談ではありません。
E社の未来を賭けたプレゼンテーションです。
銀行員Q:「E社さんほどの優良企業が、なぜ急に赤字になったのですか?何か経営管理に問題があったのでは?」
社長A:「おっしゃる通り、市況の変化に対する私の見通しが甘かった点は深く反省しております。しかし、今回の赤字は、未来への投資として採用した人材の固定費増が大きな要因です。彼らがいれば、市況回復時に他社を圧倒するスタートダッシュが切れます。この赤字は、V字回復のための『戦略的な赤字』です。」
銀行員Q:「増やした人材が今の状況では過剰なのでは?リストラは検討しないのですか?」
社長A:「彼らを解雇することは、弊社の未来を捨てることと同じです。この3,000万円で雇用を守り抜くことが、結果的に貴行への確実な返済に繋がると確信しております。どうか、私たちの未来に投資していただけないでしょうか。」
6. 融資審査の結果と成功のポイント:満額回答を引き出した信頼関係
社長の熱意と、それを裏付けるロジカルな事業計画書は、銀行の心を動かしました。
結果:信用保証協会付きの制度融資にて、希望額3,000万円の満額承認。
今回の成功の決め手は、単に計画書が優れていたからだけではありません。
(1)迅速な相談:赤字転落後、すぐに銀行に相談し、正直に窮状を打ち明けたこと。
(2)ポジティブなストーリー:赤字を「失敗」ではなく「未来への投資」と位置づけ、説得力のある成長戦略を描いたこと。
(3)具体的な計画:「なぜ赤字か」「どう黒字化するか」「そのためにいくら必要か」という銀行の疑問に、完璧に答える資料を準備したこと。
今回活用した信用保証協会の制度融資は、まさにこうした一時的な業況悪化に陥った中小企業を支援するためのものです。
公的な保証が付くことで、銀行もリスクを抑えて融資を実行しやすくなります。
厳しい時こそ、こうした公的制度を積極的に活用すべきです。
7. まとめ:この事例から全経営者が学ぶべき教訓
E社の事例は、順調な企業ほど心に刻んでおくべき教訓に満ちています。
(1)黒字から赤字への転落は、どんな優良企業にも起こり得る。重要なのは、その後の初動の速さ。
(2)銀行は「過去の栄光」には貸さない。「未来への計画」に貸す。
(3)赤字の理由を環境のせいにするのではなく、自社の課題として分析し、具体的な対策を語ることが信頼を生む。
(4)人件費は単なるコストではない。会社の未来を創る「最重要投資」として、その価値を銀行に説明する。
(5)厳しい時こそ、隠さずに銀行と対話し、共に未来を考えるパートナーとしての関係を築く。
(6)資金繰り表は、会社の生命線を守るための羅針盤。常に最新の状態に更新しておく。
(7)公的な融資制度は、知っているか知らないかで、会社の運命が大きく変わる。
8.アクションプラン
あなたの会社が同じ轍を踏まないために、今すぐこの3つのアクションを始めてください。
(1)自社の損益計算書を確認し、「固定費」が売上に対して何%を占めるか計算してみる。この比率が上昇傾向なら、注意が必要です。
(2)「もし明日、最大の取引先からの受注がゼロになったら」という最悪のシナリオで、何ヶ月持ちこたえられるかシミュレーションしてみる。
(3)顧問税理士や財務の専門家に、最新の試算表を基に「損益分岐点」を計算してもらう。会社を維持するために最低限必要な売上高を、常に把握しておきましょう。
攻めの経営は素晴らしいことです。
しかし、そのアクセルを踏む前に、しっかりとしたブレーキとエアバッグの準備を怠ってはいけません。
資金繰りが厳しく、資金調達の準備が必要、自社に合った融資制度を知りたい、
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- 手続きはが難しそうで、自分ではなかなか進められない。
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