コロナ禍で売上8割減!年商12億円の企業が複数回の資金調達に成功した事業計画書と銀行交渉の裏側

「先生、もううちの会社はダメかもしれません…」
新型コロナウイルスという未曾有の国難が日本中を覆い始めた頃、私の元に一本の電話がありました。
声の主は、都内で30年にわたりリネンサプライ事業を営むA社の社長。
インバウンド景気に沸いた数ヶ月前までの活気が嘘のように、彼の声は絶望の色に染まっていました。
この記事を読めば、最悪の状況からでも活路を見出すための具体的な資金調達の進め方が分かります。
この記事に関する目次
1.相談企業の概要と財務状況:順風満帆から一転、危機へ
A社は、東京都に拠点を置く、年商約12億円、従業員100名規模のリネンサプライ事業者です。
創業から30年、ホテルや飲食店向けに事業を拡大し、特に近年のインバウンド需要の波に乗り、業績は順調そのものでした。
しかし、私が決算書を拝見してすぐに気づいたことがありました。
過去の積極的な工場への設備投資により、借入金の残高が年商規模に対してやや大きい状態だったのです。B/S(貸借対照表)を見ると、自己資本比率も決して高いとは言えず、銀行から見れば「これ以上の追加融資には少し慎重にならざるを得ない」財務状況でした。
とはいえ、業績は好調。
既存の取引銀行との関係も悪くはありません。
このまま事業が推移すれば何の問題もなかったはずです。
そう、あの日までは。
2.経営課題と融資の必要性:売上蒸発という未曾有の事態
新型コロナウイルス感染症の影響は、A社の事業を根底から揺るがしました。
主要な取引先であるホテルや飲食店の休業が相次ぎ、月間で1億円あったはずの売上は、瞬く間に80%減の2,000万円まで落ち込みました。
まさに売上の蒸発です。
固定費は待ってくれません。
工場の維持費、従業員の給与、そして借入金の返済。
キャッシュは日を追うごとに減っていきます。
「このままでは数ヶ月で資金が底をつく」という恐怖が、社長を苦しめていました。
A社にとって、今必要なのは事業を存続させるための「延命資金」としての運転資金です。
コロナ禍というトンネルを抜け、事業を再興させる日まで、会社と従業員の生活を守り抜くための資金調達が急務でした。
3.当初の計画と見過ごされた問題点(元銀行員だから話せる本音)
最初に社長がお持ちになった計画は、正直なところ、悲壮な「SOS」に過ぎませんでした。
「とにかく2億か3億、借りられるだけ借りたいんです!」
そのお気持ちは痛いほど分かります。しかし、元銀行員だからこそ話せる本音があります。
銀行は「困っているから助けてくれ」という感情論だけでは、絶対に稟議書を書きません。
私が社長に問いかけたのは、次の3点です。
「社長、なぜ2億5,000万円なのですか?その金額の根拠は何でしょう?」
「この危機がいつまで続くと想定していますか?」
「そして最も重要なことですが、そのお金をどうやって返していく計画ですか?」
これらに明確に答えられない計画書は、担当者レベルで止まってしまい、決して支店長の決裁印をもらうことはできません。
危機的状況だからこそ銀行員を安心させ、納得させる「冷静なロジック」が必要不可欠なのです。
4.改善指導と事業計画の磨き込み:危機をロジックで乗り越える
私は社長と共に、感情的なSOSを、銀行が評価する「事業計画書」へと磨き込む作業に着手しました。
改善ポイント1:悲観シナリオに基づいた売上計画
まず、希望的観測を一切捨てました。
「夏には回復するだろう」といった甘い見通しではなく、「感染拡大が1年以上続く」という最悪のシナリオをベースに、段階的な売上減少率を設定しました。
・2020年4月~6月:前年比80%減
・2020年7月~9月:前年比70%減
(中略)
・2021年1月~3月:前年比30%減
これにより、計画に「堅実さ」と「客観性」が生まれました。
改善ポイント2:必要な資金額の明確な根拠
上記の売上計画と、徹底的に洗い出した経費削減策(役員報酬カット、一部休業など)を基に、詳細な資金繰り表を作成しました。
すると、「いつ、いくらの資金が不足するのか」が誰の目にも明らかになり「だから運転資金として2億5,000万円が必要なのです」という説得力のある根拠が完成したのです。
改善ポイント3:出口戦略の提示
雇用調整助成金など、活用できる制度はすべて盛り込み、経費負担を極限まで圧縮する計画を示しました。
これにより、営業赤字は避けられなくとも、経常利益段階では損失を最小限に抑え、コロナ収束後にはV字回復を果たせるという「返済能力の蓋然性」をアピールできるようにしました。
5.銀行面談のシミュレーションとアピール戦略:担当者を「味方」につける対話術
完璧な書類ができても、伝え方一つで結果は変わります。
銀行面談に向け、想定問答集を作成し、何度もシミュレーションを行いました。
【銀行面談 想定問答集】
銀行員Q1:「この売上回復計画、かなり厳しい数字ですが、本当に実現できるのですか?」
社長A:「はい。これは希望的観測を排した、むしろ悲観的なシナリオで策定しています。この計画を上回ることはあっても、下回るリスクは最小限に抑えています。」
銀行員Q2:「これだけの売上減ですと、従業員の雇用は維持できるのでしょうか?」
社長A:「おっしゃる通り、苦しい状況です。しかし、雇用調整助成金を最大限活用し、30年間苦楽を共にしてきた大切な従業員は一人も解雇せず、この危機を乗り越える覚悟です。」
銀行員Q3:「融資実行後、弊行としては状況が非常に気になりますが…」
社長A:「もちろんです。融資の可否に関わらず、この事業計画の進捗状況と資金繰りの状況は、毎月、書面でご報告させていただきます。隠し事は一切いたしません。」
この「 積極的)な報告姿勢」こそが、銀行員の不安を信頼に変える鍵となります。
6. 融資審査の結果と成功のポイント:先手必勝で勝ち取った資金
結果として、A社は見事にこの危機を乗り切る資金調達に成功しました。
第一弾:初動の速さで2億6,000万円を調達
緊急事態宣言が発出される前に計画を完成させ、各金融機関に相談を開始した初動の速さが全てでした。
①日本政策金融公庫(新型コロナウイルス感染症特別貸付):8,000万円
※政府系金融機関として、民間の銀行に先駆けて迅速な対応が期待できる公庫から、まず大きな資金を確保しました。
②民間銀行(セーフティネット保証4号):8,000万円
※信用保証協会の100%保証が付く制度で、銀行側のリスクがないため、スピーディーな審査が実現しました。
③商工中金:5,000万円
④民間銀行(プロパー融資):5,000万円
周到な準備があったからこそ、複数の融資制度を組み合わせた合わせ技が可能となり、当初の計画を上回る資金を他社に先駆けて確保できたのです。
第二弾:信頼関係の構築で1億円の追加借換
その後もコロナ禍が長引く中、A社は約束通り、取引銀行への月次報告を続けました。
その結果、営業利益は赤字でも、助成金活用で経常利益を黒字化させるなど、経営努力の姿勢が評価されました。
この築き上げた信頼関係があったからこそ、東京都の無利子制度を活用した1億円の借換にもスムーズに応じてくれたのです。返済開始時期を見据え、常に先を見越した相談を続けたことも、銀行側の安心材料となりました。
7.まとめ:この事例から全経営者が学ぶべき教訓
今回のA社の事例は、コロナ禍という特殊な状況でしたが、すべての経営者にとって重要な教訓が含まれています。
(1)危機対応は初動が9割。周りが動き出す前に、先手を打つことが生死を分ける。
(2)融資相談は感情論ではなく「ロジック(論理)」で。「なぜ必要か」「なぜその金額か」「どうやって返すか」を明確に。
(3)事業計画は希望的観測を捨て最悪の事態を想定してこそ信頼される。
(4)資金繰り表は会社の命運を映す鏡。数字で現状と未来を示すことが最強の武器になる。
(5)活用できる公的制度(助成金、保証制度など)は徹底的に調べ、使い倒す。
(6)銀行を「お金を借りる相手」ではなく「事業を守るパートナー」と捉え、こまめな報告で信頼関係を築く。
(7)顧問税理士など、外部の専門家と連携し、客観的な視点を取り入れる。
8.最終アクションプラン
(1)自社の決算書3期分と最新の試算表を手元に用意する。まずは自社の現在地を正確に把握しましょう。
(2)この事例を参考に、自社の「悲観シナリオ」での事業計画の骨子を書き出してみる。難しく考えず、売上減少と経費を書き出すだけでも大きな一歩です。
(3)一人で抱え込まず、信頼できる専門家や取引金融機関の担当者に「相談」してみる。早い段階での相談が、選択肢を広げます。
資金調達は準備が全てです。
「備えあれば患いなし」。
あなたの会社を守るために、今すぐ行動を起こしましょう。
資金繰りが厳しく、資金調達の準備が必要、自社に合った融資制度を知りたい、
手続きが難しそうで進める自信がないなど
元銀行員が融資獲得まで
サポートします!
- 資金繰りが厳しく、資金調達の準備をしなければ心配。
- 自分に合った融資制度を知りたい。
- 手続きはが難しそうで、自分ではなかなか進められない。
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