中小企業融資審査のポイント解説:追加融資が難しくなる状況とその突破法
金融機関に勤務していた経験から、中小企業の皆様が追加融資を検討される際に直面しやすい課題と解決策をお伝えします。
特に「融資後間もない追加融資」と「債務残高過多」という2つのケースについて融資検討のさいの審査会議の内側で何が議論されるのか、そしてどう対応すべきかを具体的に解説します。
1.融資実行後短期間での追加融資申込み
(1)審査担当者の本音と懸念点
融資実行からわずか数ヶ月で追加融資の相談は内心担当者は次のような疑問を抱きます。
①計画性への懸念:「当初の資金計画は適切だったのか?」
②使途の確認:「前回の融資資金は予定通り使われているのか?」
③経営状況の変化:「短期間で何か想定外の事態が発生したのではないか?」
特に、元金返済が始まっていない据置期間中の追加融資は、返済能力の実証がないため審査にはより慎重な判断が求められています。
(2)審査回答の種類と対応戦略
金融機関からのNG回答には「融資見合わせ」と「融資謝絶」の2種類があり、それぞれ意味合いと対応策が異なります。
(3)「融資見合わせ」の場合の対応
「融資見合わせ」は「現時点では判断できないので、もう少し状況を見させてください」という意味です。
「条件付き保留」として扱われています。
①再申込みタイミング
* 見合わせの理由が明確な場合:その課題解決後2〜3ヶ月経過時点
* 理由が不明確な場合:基本的に最低6ヶ月程度の実績を作った時点
* 新しい決算書が完成したタイミング(審査材料の更新)
②事例
営業力強化のための人材採用資金を申請されたA社は「直近で設備資金を融資したばかり」という理由で一度見合わせとなりました。
その後、新卒3名の採用計画書と売上増加シミュレーション、月次試算表による好調な業績報告を3ヶ月間継続され、4ヶ月後に再申請で融資実行となりました。
(4)「融資謝絶」の場合の対応
「融資謝絶」は「現状では融資基準を満たしていない」という明確な判断です。
①再申込みのアプローチ
* 謝絶理由の正確な把握が最優先(担当者に率直に確認を)
* 謝絶理由の根本的解決に向けた取り組み実施
* 解決策実施後、最低6ヶ月程度の実績づくり
* 再申込み時は、謝絶理由の解決を示す資料を中心に構成
(5)短期間での再申込みを成功させる具体的な準備
①資金需要の合理性説明資料
* 予想外の受注増加の証拠(発注書、契約書のコピー)
* 想定外の支出が発生した理由の客観的説明(見積書、請求書)
* 当初計画との差異分析表(数値で示す)
②事業進捗状況の可視化
* 当初計画と実績の比較表(月次ベース)
* 前回融資金の使途明細と効果測定資料
* 業績の改善傾向を示すグラフや図表
③精緻な資金繰り計画
* 月次・日次レベルでの資金繰り表(最低1年分)
* 返済原資の明確化(どの売上から返済するか)
* ストレステスト(売上が予想より10%減少した場合の資金繰り。用意できれば尚可)
2.債務残高が多い場合の対応策
(1)銀行の審査基準と判断指標
「債務残高が多い」という判断は感覚的なものではなく定量的指標に基づいています。
①債務償還年数(返済能力指標)
* 計算式:債務償還年数 = 有利子負債総額 ÷ (税引後当期利益 + 減価償却費)
* 一般的な目安:製造業7年以内、小売・サービス業5年以内
* 10年を超えると「過剰債務」と判断される可能性大
②月商倍率(借入規模の適正性)
* 計算式:借入金月商倍率 = 借入金総額 ÷ 平均月商
* 健全とされる目安:業種により異なるが3倍以内が理想的
* 5倍を超えると「借入過多」のリスク判定
③自己資本比率(財務安定性)
* 計算式:自己資本比率 = 純資産 ÷ 総資産 × 100
* 中小企業の目安:20%以上が望ましい水準
(2)審査担当者が評価する改善策
債務残高が多いという課題に対して以下の対策が効果的です。
①収益力強化による返済能力向上
* 粗利率改善のための価格戦略見直し
* 固定費削減計画の策定と実行
* 不採算部門の整理と高収益部門への経営資源集中
②負債圧縮策の明確化
* 遊休資産(不動産、設備、有価証券等)の売却計画
* グループ会社間の債権債務整理
* 役員貸付金の回収と借入返済への充当
③資本増強の取り組み
* 代表者からの増資
* 黒字決算の継続による利益剰余金の蓄積
* 事業承継を見据えた第三者からの資本の導入検討
④事例
B社は、債務償還年数18年で追加設備資金の調達が困難な状況でした。
社長と共に①低収益商品の販売停止と高収益商品へのシフト、②役員報酬30%カット、③聖域なき経費削減策を実施したことによる利益確保策を実施。
利益確保、返済原資の増加により債務償還年数を改善し3,000万円の設備資金調達に成功されました。(月次試算表をもとに改善状況と年間の利益寄与資料を作成し説明)
(3)債務残高問題の解決に向けた段階的アプローチ
第1段階:現状把握と分析(1〜2ヶ月)
* 借入金明細表の作成と返済計画の可視化
* 各借入金の目的と効果の検証
* 事業収益と借入金のバランス分析
第2段階:短期的改善策の実行(3〜6ヶ月)
* 返済優先順位の決定と資金効率の悪い借入の前倒し返済
* 不要資産の洗い出しと売却準備
* 金融機関との返済条件の再交渉
第3段階:中長期的体質改善(6ヶ月〜1年)
* 月次ベースでの返済原資確保のための利益計画実行
* 計画的な自己資本比率の引き上げ
* 定期的な銀行への経営改善報告の実施
3.融資担当者との信頼関係構築のヒント
評価される経営者の姿勢
(1) 積極的な情報開示
* 良い情報も悪い情報も適時に共有する習慣
* 月次試算表の自主的な提出(最低四半期ごと)
* 重要な経営判断の事前相談
(2)約束事項の確実な履行
* 返済計画の厳守(万一厳しい場合は早めに相談)
* 資金使途の目的通りの実行
* 経営改善計画の進捗報告
(3)長期的パートナーシップの視点
* 金融機関を単なる資金提供者ではなく経営のパートナーと位置づける
* 支援機能(ビジネスマッチング、事業承継など)の積極活用
* 担当者の異動時にも継続的な関係維持
まとめ:審査担当者の本音
金融機関は「貸したくない」のではなく「確実に返済していただきたい」「事業を長期的に支援したい」と考えています。
融資判断の厳しさは事業継続を見据えたリスク管理であり持続可能な融資関係を築くためのものです。
融資を受けるための最重要ポイントは以下の3点に集約されます。
(1)計画性の証明:資金需要の発生が想定内か、想定外の場合はその合理的説明
(2)返済能力の実証:数値に基づく返済シミュレーションと返済原資の明確化
(3)情報共有の徹底:経営状況の変化を隠さず共有し、共に解決策を模索する姿勢
資金繰りが厳しく、資金調達の準備が必要、自社に合った融資制度を知りたい、
手続きが難しそうで進める自信がないなど
元銀行員が融資獲得まで
サポートします!
- 資金繰りが厳しく、資金調達の準備をしなければ心配。
- 自分に合った融資制度を知りたい。
- 手続きはが難しそうで、自分ではなかなか進められない。
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