元銀行員が教える!売上減少時でも融資を勝ち取る実践ガイド
「融資が必要なときに限って断られる」
これは多くの中小企業経営者が抱える悩みではないでしょうか?
融資審査には「見えない審査基準」があるということです。
この記事では「売上減少時の融資獲得法」と「担当者をうまく活用する方法」についてお伝えします。
1. 売上減少時の融資審査の実態
(1)売上減少をどう見ているか
企業の成長性は重要評価項目の一つです。
決算書を見る際、まず確認するのは「前年比の売上推移」です。
①売上増加企業:「成長している企業」として前向きに検討
②売上横ばい企業:「安定している企業」として状況に応じて検討
③売上減少企業:「衰退リスクがある企業」として慎重審査
注目すべきは、売上減少と利益の関係です。
(2)売上減少パターン別の審査傾向
売上・利益状況 | 審査判断の傾向 | 審査の視点 | |
1 | 売上減少・赤字 | 融資困難になりがち | 事業継続性に懸念あり |
2 | 売上減少・利益減少 | 融資難度上がる | 将来的な返済能力低下リスクあり |
3 | 売上減少・利益増加 | 条件付き可能性 | 収益性改善は評価するが成長戦略に疑問 |
(3)売上減少時に審査で求められる説明
売上減少企業が融資を獲得するために有効だった説明ポイント。
①売上減少の合理的説明
* 業界全体の縮小傾向(データでの裏付け)
* 特定取引先の事情(取引先の状況資料)※決算時に売上高のABC分析等を添付しておくと理解されやすいです。
※売上高のABC分析とは、売上高を基に商品をA、B、Cの3つのグループに分け売上への貢献度が高い順に優先度を決める分析手法です。
* 戦略的な不採算部門の整理(事業再構築計画)
②回復見通しの具体性
* 月次ベースでの売上推移(底打ち・回復傾向の可視化)
* 受注残高や引合い状況の数値化
* 回復に向けた具体的施策とKPI
※KPI:企業の目標達成に向けたプロセスの進捗状況を定量的に評価・分析するための指標です。
【KPIの具体例】
・セールス:受注件数、売上高、顧客獲得数、成約率など
・マーケティング:ウェブサイト訪問者数、顧客満足度、リピート率など
・人事:採用者数、従業員満足度、離職率など
③利益確保の持続可能性
* コスト削減の内訳と継続性
* 高付加価値商品・サービスへの転換事例
* 利益率改善策の効果測定
④実践的な対策:売上減少時の融資獲得成功事例
【事例1:製造業A社】
売上高が前年比15%減少していましたが、以下の対応で3,000万円の設備資金融資を獲得
* 売上減少は特定大口顧客の海外移転が原因と明確に説明
* 新規顧客5社との取引開始証明(発注書・契約書提示)
* 今後3年間の回復計画と月次での進捗管理体制の提示
【事例2:小売業B社】
売上高が前年比8%減少、利益20%減少の状況でも、2,000万円の運転資金融資を獲得
* 不採算店舗閉鎖による一時的売上減少と説明
* 残存店舗の売上が直近3ヶ月で回復傾向を数値で提示
* ECサイト立上げによる新規顧客獲得実績の証明
2. 金融機関担当者との関係構築
(1)担当者の経験・知識不足が引き起こす問題
金融機関の担当者は通常50〜100社を担当しており、すべての業種に精通しているわけではありません。
また、2年〜4年程度で異動することも多く担当者の経験不足が融資判断に影響することも現実です。
①担当者の経験不足による具体的なリスク
* 業界知識の不足:業界特有の資金需要サイクルや商習慣を理解できない
* 提案力の限界:最適な融資商品を提案できない
* 稟議作成能力:内部説得力のある審査資料を作成できない
* 経営課題の把握不足:本質的な経営課題を見抜けず対話が表面的になる
(2)効果的な担当者サポート戦略
①適切な情報提供
* 決算書だけでなく、月次試算表を定期的に提供
* 業界情報や専門用語の解説資料の共有
* 取引先や仕入先との関係する資料
②面談準備のサポート
* 面談前に議題を事前に伝える
* 想定される質問への回答を用意
* 過去の融資審査での指摘事項への対応状況資料
③専門家の活用
* 顧問税理士等との同席面談の設定
* 経営革新等支援機関の認定支援機関の活用
* 必要に応じて顧問弁護士等の専門家の見解を提示
(3)担当者の能力に左右されない融資獲得法
①融資判断権限者へのアプローチ
* 支店長や融資課長との面談機会を設ける
* 商工会議所や地銀の経営者向けセミナーなどへの参加
* 取引銀行の本部担当者との関係構築
②「審査部向け資料」の提供
* 審査部が重視するポイントを押さえた資料作成
* 数値根拠と将来予測の論理的説明
* 業界動向と自社の強みを客観的に示す資料
③信頼関係の多層化
* 営業担当者だけでなく支店幹部との関係構築
* 複数の担当者と接点を持つ(営業担当者と来店時に対応してくれる内部事務の担当者や役職者など)
* 地域貢献活動などを通じた銀行との関係多様化
3. 融資審査で重視しているポイント
(1)事業に対する理解と情熱
* 経営者自身が事業の現状や将来性を明確に語れるか?
* 困難な状況でも前向きに取り組む姿勢があるか?
* 業界環境の変化に対応する柔軟性があるか?
(2)財務数値の理解と対策
* 自社の財務上の弱点を認識しているか?
* 改善のための具体的な行動計画があるか
* 資金繰り管理の精度と予測能力
(3)情報開示の姿勢
* 良い情報も悪い情報も隠さず共有する姿勢
* 問題発生時の早期相談
* 計画と実績の差異説明の的確さ
4. 融資申込前の銀行対応チェックリスト
(1)売上減少企業向け融資申込み前チェックリスト
□ 売上減少の要因分析資料を用意している
□ 直近3ヶ月の売上推移資料を作成している
□ 今後の回復見込みを示す具体的な根拠がある
□ 資金使途と返済計画の整合性を確認している
□ 過去の融資審査での指摘事項への対応状況をまとめている(対応をおこなっている)
□ 業界全体のトレンドと自社の位置づけを説明できる
□ 同業他社との差別化ポイントを明確にしている
□ 経営改善の具体的な取り組みと成果を数値化している
(2)担当者との関係構築チェックリスト
□ 担当者の経験・知識レベルを把握している
□ 担当者が社内説明に使える具体的な資料を提供している
□ 担当者が不在時の相談先(上席者)を把握している
□ 定期的な情報提供(月次試算表など)を行っている
□ 決算書以外の経営状況を示す補足資料を用意している
□ 金融機関向けの事業説明会の実施を検討している
まとめ:成功する融資提案のために
売上減少局面でも融資を獲得するためには、「現状の正確な説明」と「回復への具体的道筋」の提示が不可欠です。
また、 金融機関担当者の経験や知識に左右されない関係構築には「適切な情報提供」と「多層的な銀行内部との関係構築」が効果的です。
融資は断られるためにあるのではなく事業発展のために活用するものです。
金融機関を単なる資金提供者ではなく経営のパートナーとして位置づけ積極的な対話を続けることが、長期的な信頼関係構築の鍵となります。
資金繰りが厳しく、資金調達の準備が必要、自社に合った融資制度を知りたい、
手続きが難しそうで進める自信がないなど
元銀行員が融資獲得まで
サポートします!
- 資金繰りが厳しく、資金調達の準備をしなければ心配。
- 自分に合った融資制度を知りたい。
- 手続きはが難しそうで、自分ではなかなか進められない。
元銀行員が融資獲得まで
サポートします!
- 資金繰りが厳しく、資金調達の準備をしなければ心配。
- 自分に合った融資制度を知りたい。
- 手続きはが難しそうで、自分ではなかなか進められない。