【融資マニュアル】中小企業が融資を断られる理由とは? (赤字決算・返済遅延)

本記事は、中小企業経営者が金融機関から融資を受ける際に直面する「断られる理由」について金融機関内部の視点から解説しています。
融資の現場で実際に何が起きているのか、どのような企業が評価され、どのような企業が融資を断られるのかを具体的に理解することで、融資成功率を高めるための実践的な対策を提案しています。
特に多くの中小企業が直面する「赤字決算」と「返済遅延」について解説します。
この記事に関する目次
はじめに:なぜ融資が断られるのか
「長年取引のある銀行から融資を断られてしまった…」
「担当者からは大丈夫と言われていたのに、審査で通らなかった…」
このような経験をお持ちの中小企業経営者は少なくありません。断られた理由として、
「支店はOKでも審査部がNG」「保証協会が見送り」「しばらく様子を見てほしい」
などと言われ、具体的な理由が分からないまま途方に暮れてしまうケースが多いのが実情です。
銀行内部では何が起きているのでしょうか?
今回は、特に多い「赤字決算」と「返済遅延」をテーマに、その真の理由と効果的な対策を詳しく見ていきましょう。
1. 赤字決算で融資が断られる理由
(1)赤字の種類と金融機関の見方
赤字決算には、様々な理由が考えられます。
①売上減少による業績悪化
②原材料費や人件費などの費用増加
③節税目的による意図的な赤字計上
④減価償却費や前払費用の計上による会計上の赤字
しかし、赤字決算書を前にすると、金融機関は融資に慎重にならざるを得ません。
2.なぜ赤字企業への融資は難しいのか?
金融機関が最も重視するのは「返済能力」です。
長期運転資金の返済原資は基本的に「税引後利益 + 減価償却費」です。
赤字決算では、この返済原資が確保されていると判断することが難しく、「返済できないのではないか」という懸念を抱いてしまいます。
特に、売上総利益(粗利)や営業利益が赤字の場合、本業での収益力が低いと判断され、融資審査はさらに厳しくなります。
【事例】赤字決算でも融資が通った中小製造業A社の場合
A社は製造業を営む従業員20名の会社で、設備投資のための融資を申し込みましたが、直近の決算が赤字だったため、一度は融資を断られました。
しかし、以下の対策を講じたところ、3か月後に再申込みをしたところ融資が実行されました。
①赤字の明確な原因(大口顧客の一時的な受注減)と、その後の受注回復の証拠(発注書、契約書)を提示
②赤字は減価償却費の増加(前年の設備投資の影響)が主因で、キャッシュフロー自体はプラスだったことを示す資料を作成
③コスト削減計画を具体的な数字と共に提示(外注費の10%削減、燃料費の3%削減など)
3.赤字決算企業のための融資獲得戦略
(1)将来の収益見通しを具体的に示す
①受注残や契約書など、将来の売上を裏付ける具体的な証拠を提示する
②過去3年間と今後3年間の業績推移を示すグラフや表を作成する
(2)コスト削減計画を策定し実行する
①具体的な数値目標とスケジュールを明確にした計画書を作成
②すでに実施している削減策の効果を数字で示す
(3)キャッシュフロー計算書の作成
①会計上の赤字でもキャッシュフローがプラスであることを示す
4. 返済遅延が融資審査に与える影響
(1)一度の遅延が招く信用の崩壊
「一度や二度なら大丈夫」と安易に考えていませんか?
金融機関にとって返済遅延は、システム上自動的に記録され、決して軽視できない問題です。銀行内部では、一度の返済遅延でも「注意先」としてマークされ、以後の取引に大きな影響を与えます。
(2)返済遅延が引き起こす銀行内部の動き
返済が遅れると、金融機関の勘定上は「未収入金」となり、支店だけでなく本部にも情報が共有されます。
特に、金融機関の中間決算(9月)や本決算(3月)の時期には、金融機関自身の決算にも影響を与えるため、担当者は期日通りの返済を受けられないと厳しい立場に立たされます。
また、延滞が続くと金融機関内部の債権区分が変更され、「要注意先」や「要管理先」に分類される可能性も高まります。
【事例】返済遅延を乗り越えたB社の取り組み
小売業を営むB社は、季節的な資金繰りの悪化により、2回連続で返済が3日間遅延してしまいました。
その後の融資申込みでは、明確な理由は示されないまま「しばらく様子を見させてください」と言われる状況に陥りました。
B社が信用を回復し、新規融資を獲得するまでに行った対策は以下の通りです。
①担当者に誠意を持って状況を説明し改善策を提示
②毎月の資金繰り表を作成し、3か月先までの予測を銀行に提出
③返済日の前日までに必ず口座残高を確認し資金を確保
④6か月程度の返済実績を作った後、改めて融資を申込み
5.返済遅延を防ぐための実践的対策
(1)綿密な資金繰り計画の策定
①月次ではなく週次、できれば日次の資金繰り表を作成する
②返済日の前には必ず余裕資金を確保する習慣をつける
(2)口座管理の徹底
①自動引き落とし口座の残高を定期的に確認する
②複数の返済がある場合は、カレンダーなどで視覚化して管理する
(3)未然防止と事前対応
①返済が厳しくなりそうな場合は、返済日の最低1週間前までに担当者に相談する
② 一時的な返済条件の変更など、解決策を一緒に考えることも可能な場合がある
(4)返済優先度の明確化
①資金が限られている場合、銀行融資の返済を最優先事項として位置付ける
②取引先への支払いなどと比較しても、銀行返済を優先すべき場合が多い
6. 融資担当者との関係構築のポイント
金融機関から融資を受けるためには、数字だけでなく、人間関係も重要です。
(1)定期的なコミュニケーション
①良い時も悪い時も、定期的に情報を共有する
②四半期ごとの業績報告や経営計画の進捗状況を伝える
(2)問題が発生した際の迅速な相談
①問題を隠さず、早めに相談する姿勢が信頼につながる
②解決策を自社だけで考えるのではなく、銀行の意見も求める
(3)銀行の立場を理解する
① 担当者も組織の一員であり、審査部や上司への説明責任がある
②担当者が融資を起案しやすいような資料作りを心がける
まとめ:融資成功への道筋
中小企業が融資を断られる主な理由として、今回は「赤字決算」と「返済遅延」を解説しました。
これらの問題は金融機関からの信用を大きく損ね、融資審査に深刻な悪影響を及ぼします。
しかし、単に「運が悪かった」と諦めるのではなく、なぜ融資が断られたのかを正確に理解し、的確な対策を講じることで、融資獲得の可能性を高めることができます。
重要なのは、金融機関の視点に立って自社を見つめ直すことです。
返済能力の明確な提示、誠実なコミュニケーション、そして何より事業の将来性を具体的に示すことが、融資成功への鍵となります。
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