融資獲得のためのアプローチ:金融機関が重視する「資金使途」と「借入額」の実務
健全な事業成長には適切な資金調達が不可欠です。
融資審査においては申込内容の合理性と返済可能性を総合的に判断しています。
「資金が必要」というだけでは融資判断が困難であることをご理解いただきたいと思います。
ここでは、融資審査の核となる「資金使途」と「借入額」についてアドバイスをお伝えします。
1.資金使途:金融機関の審査視点を踏まえた効果的な説明方法
融資審査において「何のために資金を使うのか」は最重要評価項目の一つです。
金融機関は資金使途から「事業性」と「返済可能性」を見極めようとしています。
1-1. 設備資金と運転資金の明確な区分と説明ポイント
資金使途は大きく「設備資金」と「運転資金」に分類されますが、審査では両者を異なる視点で評価しています。
(1)設備資金のポイント
設備資金は、具体的な投資対象と期待される投資効果を示すことが重要です。
– 投資の必要性(なぜ今この設備投資が必要なのか)
– 投資対効果(導入により売上・利益にどの程度寄与するか)
– 設備の耐用年数と融資期間のバランス
– 既存設備の稼働状況と新規設備導入の合理性
特に「投資効果」については、数値を用いた客観的説明が高く評価されます。
(2)運転資金のポイント
運転資金については、事業サイクルにおける資金需要と必要額の妥当性を説明することが肝要です。
– 仕入・在庫・売上のサイクルと資金需要の関係性
– 季節変動要因の有無と影響度
– 人件費増加の場合は、人材投資による売上向上効果
– 一時的な資金需要か継続的な資金需要かの区別
運転資金は「なぜその金額が必要か」を月次の資金繰り表と関連付けて説明されるとより説得力が増します。
1-2. 金融機関を納得させる具体的説明テクニック
具体性と論理性を備えた説明は高く評価されます。
(1)設備資金の効果的な説明例
「当社は現在、製造ライン2台で月産800個の生産を行っていますが、直近6ヶ月間の受注は平均で月1,000個に達しています。
この需要増に対応するため、月産400個の製造ラインを1台(2,000万円)増設し、年間売上1.2億円増加、粗利益2,400万円の向上を見込んでいます。」
このように、現状の課題→投資内容→期待効果を数値で示すと説得力が増します。
(2)運転資金の効果的な説明例
「来月から新規取引先A社との取引を開始します。
初回発注額3,000万円の製品を9月に納品しますが支払いサイトが検収後60日のため、仕入資金1,800万円と製造経費700万円を当面手当てする必要があります。
A社からの入金は11月末を予定しており、当融資は12月に全額返済可能です。」
このような時系列に沿った具体的説明は、審査担当者にとって理解しやすく、融資の必要性と返済可能性を明確に把握できます。
1-3. 審査を円滑に進める効果的な資料作成法
裏付け資料の質と整理状況も重要な評価ポイントとなっています。
(1)設備資金の提出資料とその効果的な見せ方
– 複数社からの見積書(比較検討していることをアピール)
– 導入設備の仕様書と現状設備との比較表
– 設備導入後の生産能力・効率化指標の予測データ
– 類似設備導入企業の成功事例(可能であれば)
– 投資回収計画書(月次または四半期ベース)
(2)運転資金の提出資料とその効果的な見せ方
– 直近3ヶ月〜6ヶ月の資金繰り実績と今後の予測
– 得意先の発注書・契約書(新規案件の場合)
– 売掛金の回収予定表と仕入債務の支払予定表
– 季節変動要因がある場合は、過去数年間の月次推移データ
– 増加運転資金の算出根拠となる計算書
2. 借入額:金融機関が評価する合理的な資金計画
適切な借入額の設定は融資成功の鍵です。
実際の審査では、「必要資金の合理性」と「返済能力とのバランス」を重点的に確認しています。
2-1. 金融機関が評価する借入可能額の算出法
融資可能額は一般的に返済能力に基づいて判断されます。
(1)借入金月商倍率による評価
業種によって適正値は異なりますが、一般的に、
– 製造業:3〜5ヶ月程度
– 卸売業:2〜3ヶ月程度
– 小売業:2〜4ヶ月程度
– サービス業:3〜6ヶ月程度
を目安としています。
例えば月商1,000万円の製造業であれば、借入総額は3,000万円〜5,000万円が一つの目安となります。
(2)債務償還年数による評価
計算式:債務償還年数 = 借入金総額 ÷ 年間返済原資(税引後利益+減価償却費)
この数値が10年以内であれば比較的良好と判断されることが多いです。ただし、業種特性や事業ステージにより異なる場合もあります。
(3)新規借入による返済負担率の変化
計算式:返済負担率 = 年間返済額 ÷ 年間売上高
この数値が10%を超えると資金繰りが厳しくなる可能性が高まります。
新規借入を検討する際には、総返済負担率の変化をシミュレーションされることをお勧めします。
2-2. 説得力のある資金計画書作成のポイント
融資後の事業展開と返済見通しが明確な資金計画書は高評価となります。
(1)効果的な資金繰り表の作成法
– 過去6ヶ月の実績と今後12ヶ月の予測を月次で作成
– 季節要因や特殊要因を注記で明記
– 資金需要のピークと返済財源の発生時期を明確に
– 前年同月比較データを併記(可能であれば)
– 最悪シナリオでも返済可能な保守的な計画
(2)説得力ある損益計画書のポイント
– 売上予測の根拠を明示(受注残・引合状況・市場予測など)
– 経費項目は過去実績に基づいた合理的な数値設定
– 融資による効果(売上増・コスト削減など)を反映
– 月次または四半期ベースでの詳細な計画
– 利益計画と資金繰り表の整合性確保
審査では、数字の整合性と予測の根拠を重視しています。
特に「なぜその売上が見込めるのか」「なぜコスト削減が可能なのか」の論理的説明が重要です。
2-3. 金融機関が評価する余裕を持った資金計画
融資審査においては、資金計画の実現可能性と不測の事態への対応力も重視されます。
(1)適切な資金バッファの設定
予測資金需要の10〜20%程度の余裕を持たせることを推奨しています。
ただし、過度に大きな余裕は「資金使途の曖昧さ」と判断される可能性があるため注意が必要です。
(2)リスクシナリオの提示
想定されるリスク(売上未達・コスト増加など)とその対応策を簡潔に説明することで経営者としての危機管理能力をアピールできます。
(3)段階的な設備投資計画の提示
大型の設備投資の場合、全体計画とともに段階的な投資スケジュールを示すことでリスク分散への配慮をアピールできます。
3. まとめ:金融機関との関係構築も含めた融資戦略
融資は単なる資金供給の判断だけでなく長期的な関係構築になります。
(1)日常的な金融機関とのコミュニケーション
定期的な業況報告や経営計画の共有は、融資をスムーズに進める土台となります。困ったときだけではなく、良い情報も積極的に共有することをお勧めします。
(2)融資実行後の報告姿勢
融資実行後も、資金の使途や事業進捗を定期的に報告することで信頼関係が強化されます。特に計画と乖離が生じた場合は、早期に相談されることが望ましいです。
(3)複数の調達手段の検討
銀行融資だけでなく公的融資制度や補助金・リースなど複合的な資金調達戦略を検討されることは財務基盤強化の観点から望ましいです。
資金繰りが厳しく、資金調達の準備が必要、自社に合った融資制度を知りたい、
手続きが難しそうで進める自信がないなど
元銀行員が融資獲得まで
サポートします!
- 資金繰りが厳しく、資金調達の準備をしなければ心配。
- 自分に合った融資制度を知りたい。
- 手続きはが難しそうで、自分ではなかなか進められない。
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