決算書は未来を語る武器になる!銀行融資の審査を有利に進めるための財務分析・攻略マニュアル

「決算書の見方がよくわからない…」
「銀行員に決算書のどこを突っ込まれるか不安だ…」
「赤字決算だから、もう融資は無理だと諦めている…」
社長、決算書を前にして、一人で頭を抱えていませんか?
多くの社長が決算書に対して苦手意識を持っていることを痛感してきました。
しかし、決算書は過去の成績表であると同時に、未来の可能性を銀行に伝えるための最強のプレゼン資料です。
この記事では、「決算書のどこを、どう見るか」という審査の基本的なポイントをお伝えします。
この記事を最後まで読めば、自社の決算書の強みと弱みを正確に把握し、自信を持って銀行との融資審査に臨めると思います。
この記事に関する目次
1.銀行員は決算書の「ココ」を見ている!融資審査で最重要視される8つの指標
銀行員は、決算書をただ眺めているわけではありません。特定の数字を抜き出し、計算式に当てはめて「企業の健康状態」を診断しています。
ここでは、融資審査で特に重要視される8つの指標について解説します。
(1)【収益性】本業で稼ぐ力はどれくらいあるか?
①売上高営業利益率(本業の儲け)
【計算式】営業利益 ÷ 売上高 × 100
【銀行員の視点】「この会社は、本業でしっかり利益を出せているか?」を見ています。
たとえ売上が大きくても、この率が低ければ「薄利多売で自転車操業なのでは?」と懸念します。
業種にもよりますが、安定して黒字を確保できていることが大前提です。
赤字の場合は、その理由と改善策を明確に説明できなければなりません。
②売上高経常利益率(会社全体の実力)
【計算式】経常利益 ÷ 売上高 × 100
【銀行員の視点】営業利益に、本業以外の収益(受取利息など)や費用(支払利息など)を加味した、会社全体の総合的な収益力を見ています。
銀行は営業利益よりもこの経常利益を重視する傾向があります。
なぜなら、借入金の利息を支払った上で、なお利益が残っているかどうかが分かるからです。
(2)【安全性】会社はどれくらい倒産しにくいか?
③自己資本比率(会社の体力)
【計算式】自己資本(純資産) ÷ 総資産 × 100
【銀行員の視点】総資産のうち、返済不要の自分のお金(自己資本)がどれくらいあるか、つまり会社の「体力」を見ています。
この比率が高いほど借入への依存度が低く、財務が安定していると評価します。
中小企業の平均は15%前後ですが理想は30%以上。
もし低くても「毎年利益を積み増して改善しています」と説明できればプラスに働きます。
④流動比率(短期的な支払い能力)
【計算式】流動資産 ÷ 流動負債 × 100
【銀行員の視点】1年以内に現金化できる資産(流動資産)が1年以内に返済すべき負債(流動負債)をどれだけ上回っているかを見ています。
これは会社の「短期的なスタミナ」です。
100%を切っていると「来月の支払いは大丈夫か?」と資金繰りを非常に心配します。
理想は150%以上です。
(3)【返済能力】借りたお金を返す力はあるか?
⑤債務償還年数(借金完済までの年数)
【計算式】有利子負債 ÷ (経常利益+減価償却費)
【銀行員の視点】「この会社は、今の儲けで借金を何年で返せるのか?」を測る、非常に重要な指標です。
一般的に10年以内が健全な水準とされます。
これが15年、20年と長くなると「借金が重すぎて新たな融資は難しい」と判断されがちです。
改善するには、利益を増やすか、借入を減らすしかありません。
⑥借入月商倍率(借入金の過大度)
【計算式】借入金合計 ÷ 月商
【銀行員の視点】借入金が月商の何倍あるかを見て、借入が過大でないかを判断します。
業種によりますが、一般的には3~6ヶ月分が目安です。
これを超えてくると「売上規模に対して借りすぎでは?」という印象を与えます。
(4)【資金繰り・成長性】
⑦現預金月商倍率(手元資金の余裕度)
【計算式】現預金 ÷ 月商
【銀行員の視点】不測の事態に備えて、手元にどれくらいの現金を持っているかを見ています。
中小企業であれば、最低でも月商の1ヶ月分、できれば1.5~2ヶ月分は確保しておきたいところです。
これが少ないと「資金繰りに余裕がなく、何かあったらすぐにショートするのでは」と警戒されます。
⑧前期比較(会社の成長性)
【銀行員の視点】 これまでの指標と合わせて、売上や各利益が前期と比べてどう変化したかを見ます。
増収増益が理想ですが、たとえ減益や赤字でも、その理由を合理的に説明できるかが重要です。
「円安で売上が落ちたが、ネット通販に切り替えて回復基調です」といった具体的な説明は、経営者の課題解決能力を示すアピールになります。
2.決算書でNG!?絶対にやってはいけない勘定科目の罠
「少しでも決算書を良く見せたい…」その気持ちは痛いほど分かります。
しかし、安易な数字の操作は、あなたの会社の信用を根底から破壊します。
銀行員は以下の勘定科目を特に注意深く見ています。
(1)仮払金、立替金、役員貸付金
これらは「使途不明金」の温床です。
特に「役員貸付金」は「会社の金を社長が私的に流用している。公私混同が甚だしい」「融資が資金使途以外に流用されてしまう」と判断し、融資審査で厳しい評価を下します。
これはNGになりかねない、最も避けるべき勘定科目です。
(2)過大な在庫(商品・仕掛品)
長期間動いていない在庫や、価値のなくなった在庫を資産として計上していませんか?
これは実質的な損失であり、利益の水増し(粉飾)と見なされます。
(3)回収不能な売掛金
何年も回収できていない売掛金をそのままにしていませんか?
これも実態のない資産であり、銀行は厳しくチェックします。
銀行員は、勘定科目内訳明細書を必ず確認します。
小手先の操作はすぐに見抜かれ「信用できない経営者」という烙印を押されてしまいます。
3.融資の明暗を分けた!決算書にまつわるリアルな成功・失敗事例
百聞は一見に如かず。私が実際に担当した企業の事例から、決算書のどこが評価され、どこが問題視されたのかを学んでください。
成功事例①:堅実経営をアピールした建設業A社(年商8,000万円)
| 状況 | 公共工事の減少で減収減益。しかし、長年の堅実経営で内部留保は厚い。運転資金を申し込みたい。 |
| 融資希望額 | 500万円 |
| 結果 | 500万円の融資実行 |
| 評価されたポイント | 売上や利益は落ち込んでいたものの自己資本比率が40%と非常に高く、財務の安定性が際立っていた点。「利益が出た分はしっかり会社に蓄え、万が一に備える」という経営姿勢が、銀行に安心感を与えました。 |
成功事例②:赤字の理由を明確に説明したITサービス業B社(年商5,000万円)
| 状況 | 新サービス開発のためのエンジニア採用で人件費が先行し、創業以来初の赤字決算。追加の運転資金が必要。 |
| 融資希望額 | 1,000万円 |
| 結果 | 800万円の融資実行 |
| 評価されたポイント | 「なぜ赤字なのか?」という問いに対し、「未来への投資である」と明確に説明できた点。具体的な事業計画書で、新サービスがいつから売上を生み、何年で投資を回収できるのかを数字で示したことで、銀行は「計画性のある前向きな赤字」と判断しました。 |
失敗事例:公私混同を疑われた飲食業C社(年商6,000万円)
| 状況 | 利益は出ているが、資金繰りは常に苦しい。新規出店のための設備資金を申し込みたい。 |
| 融資希望額 | 1,500万円 |
| 結果 | 融資見送り(否決) |
| 評価されたポイント | 決算書に1,000万円以上もの「役員貸付金」が計上されていた点。社長は「一時的に個人的な支払いに充てただけ」と説明しましたが、銀行は「利益が出ても社長個人に流れてしまい、会社に資金が残らない体質だ」「融資が資金使途以外に流用されてしまう」と判断。どんなに事業計画が立派でも、この一点で信用を失い、話を聞いてもらえませんでした。 |
4.これで面談も怖くない!決算書に関する銀行からの想定問答集
面談で必ず聞かれるであろう質問と、その模範解答を準備しておきましょう。
Q1. 「今期、経常利益が減少していますが、理由は何ですか?」
【NG回答】 「いやー、景気が悪くてですね…」
【OK回答】「はい、主な要因は2つです。1つは主要取引先の受注が一時的に減少したこと。2つ目は原材料費が15%高騰したことです。対策として、新規顧客を〇件開拓中で、仕入先の見直しも進めており、来期には利益率が〇%改善する見込みです。」
【ポイント】 外部要因のせいにせず、原因を分析し、具体的な対策と今後の見通しをセットで語ること。
Q2. 「自己資本比率が低いですが、今後どのように改善していきますか?」
【NG回答】 「頑張って利益を出します…」
【OK回答】「ご指摘の通り、現状の課題と認識しております。今期からは役員報酬の一部を資本に振り替える(DES)と共に5カ年の経営計画で毎期〇〇円の税引後利益を確保し、内部留保を積み増す計画です。3年後には自己資本比率を〇%まで引き上げることを目標としています。」
【ポイント】 課題を認識していることを示し、実現可能な改善策を具体的に提示すること。
5.まとめ:融資を引き出す「強い決算書」を作るための鉄則
最後に、この記事の要点をまとめます。これだけは必ず覚えて、自社の決算書と向き合ってください。
(1)決算書は、銀行があなたの会社の「収益性」「安全性」「返済能力」を判断するための健康診断書である。
(2)営業利益だけでなく、銀行が重視する経常利益を意識した経営を心がける。
(3)会社の体力測定である自己資本比率は、融資審査における重要な信頼の証となる。
(4)役員貸付金は作らない。公私混同は銀行が最も嫌う行為であり、一発NGになりかねない。
(5)赤字や減益でも諦めない。その理由と改善策を具体的に語れればピンチはチャンスに変わる。
(6)勘定科目内訳明細書まで見られることを意識し小手先の粉飾は絶対にしない。誠実さが最大の武器である。
6.さあ、次の一歩へ!今すぐやるべき3つのアクションプラン
この記事を読んで、決算書との向き合い方が少し変わったのではないでしょうか。
知識を得ただけで終わらせず、すぐに行動に移しましょう。
(1)自社の決算書(直近2期分)を準備する。
本記事で解説した8つの指標を、実際に自社の数字で計算してみましょう。
まずは自社の健康状態を客観的に把握することが第一歩です。
(2)自社の決算書の「強み」と「弱み」を書き出す。
計算した指標を元に、「自己資本比率は高いが、利益率が低い」など、アピールできる点と説明が必要な点を整理してください。
(3)顧問税理士に相談する。
「銀行融資を考えているので、この決算書について銀行からどんな質問をされそうか?」と専門家の視点でアドバイスを求めましょう。
信頼できるパートナーからの客観的な意見は、何よりの助けになります。
決算書は、あなたのこれまでの努力の結晶です。
その数字の裏にあるストーリーを、あなたの言葉で自信を持って語ってください。
銀行員も人間です。
データはもちろん重要ですが、最後は経営者の熱意と誠実さが心を動かします。
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