「決算書」で融資を断られないために。銀行が見ているポイントを解説
「決算書?税理士に任せっきりで、内容はよく分からない…」
「今期は赤字だったが、正直に提出して融資を申し込むしかないのだろうか…」
資金繰りに悩む経営者の皆様から、このような声を毎日のように伺います。
その不安や疑問、この記事を読めばすべて解消します。
銀行が見ている決算書のポイントを理解し戦略的に決算書を作成するノウハウを身につければ、自信を持って融資交渉に臨めるようになります。
この記事に関する目次
1.決算書は企業の「通信簿」ではなく「最強のプレゼン資料」です
多くの経営者が、決算書を「年に一度の成績表(通信簿)」のように捉えています。
しかし、これは非常にもったいない考え方です。
融資を勝ち取る経営者は決算書を「銀行に対する最強のプレゼンテーション資料」だと理解していました。
決算書は、過去1年間の頑張りを伝えるだけでなく、「私たちの会社には、これだけの返済能力と将来性がありますよ」と、数字で雄弁に語るための武器なのです。
「税理士に任せているから」と内容を把握しないまま銀行に提出するのは、武器を持たずに戦場へ向かうようなもの。
当期の融資戦略を放棄していると言っても過言ではありません。
2.銀行員は決算書の「ここ」を見ている!融資担当者の本音
では、銀行員は決算書のどこを重点的に見ているのでしょうか?
小難しい指標はたくさんありますが、根幹にあるのはたった一つです。
「この会社は、貸したお金を利息付きでしっかり返してくれるのか?」
これに尽きます。そして、その返済能力を測るために、私たちが必ず見ていたのが「返済原資」です。
・返済原資 = 税引後当期純利益 + 減価償却費
この式は覚えてください。
・税引後当期純利益:会社が最終的に手元に残したお金。
・減価償却費:実際には支出していないが、会計上費用として計上されるお金。
銀行は、この合計額が「年間の借入返済額」を上回っているかをチェックします。
いくら社長が面談で「将来は明るいです!」と熱弁しても、決算書上でこの返済原資が確保できていなければ、稟議書に「返済能力に懸念あり」と書かざるを得ないのです。
税理士の先生は「節税」のプロですが、銀行融資は全く別の視点が必要です。
税金を払いたくない気持ちは痛いほど分かりますが、過度な節税で利益を圧縮しすぎた結果、赤字決算となり、必要な時に融資が受けられない…。
これが、多くの中小企業が陥る典型的な失敗パターンなのです。
3.【事例で学ぶ】決算書の作り方で明暗が分かれた3つの会社
決算書の作り方一つで、いかに結果が変わるか。私が実際に見てきた事例をご紹介します。
【成功事例①】わずかな黒字を死守し、希望額の融資を獲得した製造業A社
| 企業概要 | 年商8,000万円の金属加工業 |
| 融資希望額 | 1,000万円(設備投資資金) |
| 決算状況 | 原材料高騰で苦戦。期末時点で赤字転落の危機。 |
| 対応 | 決算月直前に社長が税理士と協議。 「今、融資を引けなければ来期の成長はない」と節税目的で計上していたいくつかの経費を見直し最終的に50万円の黒字を確保。 |
【審査結果と評価ポイント】
| 結果 | 希望額1,000万円の満額融資に成功。 |
| 評価 | 厳しい状況でも利益を出そうとする経営姿勢が「経営管理能力の高さ」として高く評価されました。 赤字と黒字では、銀行内の稟議の通りやすさが天と地ほど違います。わずかでも利益を確保したことが勝因でした。 |
【成功事例②】赤字でも回復基調を示し、追加融資に成功した飲食業B社
| 企業概要 | 年商4,000万円の飲食店 |
| 融資希望額 | 500万円(運転資金) |
| 決算状況 | 前期はコロナ禍の影響で300万円の赤字。 |
| 対応 | 赤字決算書と同時に、直近6ヶ月分の月次試算表を提出。客足が回復し、3ヶ月前から単月黒字化していることを客観的な数字で証明。今後の売上回復計画も具体的に示しました。 |
【審査結果と評価ポイント】
| 結果 | 希望額500万円の融資に成功 |
| 評価 | 赤字という事実は変えられませんが「最悪期は脱し、V字回復の兆しが見える」ことをデータで示せたのが大きかった。 赤字の理由が明確で、かつ具体的な改善策と実績を提示できれば、銀行は将来性に賭けてくれます。 |
【失敗事例】過度な節税で赤字転落。将来性を語るも玉砕したITサービス業C社
| 企業概要 | 年商5,000万円のITサービス業 |
| 融資希望額 | 800万円(人材採用・開発資金) |
| 決算状況 | 利益は出ていたが、社長の高級車を経費計上するなどして150万円の赤字決算に。 |
| 対応 | 面談で「来期は大型案件が控えている」と将来性をアピール。 |
【審査結果と問題点】
| 結果 | 融資見送り(ゼロ回答) |
| 問題点 | 決算書から「利益が出ているのに、意図的に赤字にしている」ことが明白でした。 銀行員から見れば、「税金は払いたくないが、お金は借りたい」という都合の良い話にしか聞こえません。 数字(決算書)と行動(面談での発言)に一貫性がなく、経営者の信頼性を著しく損ねた典型的な失敗例です。 |
4.今すぐ使える!決算前に税理士と確認すべき「戦略的決算チェックリスト」
決算を締める前に、必ず税理士の先生と下記の点を確認してください。
「融資を受けたいので、銀行目線でアドバイスが欲しい」と伝えれば、先生も協力してくれるはずです。
| チェック項目 | 確認するポイント(銀行はこう見る!) |
| □ 1. 最終利益は黒字か? | 最重要項目。1円でも黒字なら「黒字企業」。赤字とは天と地の差。 |
| □ 2. 過度な節税をしていないか? | 利益を意図的に圧縮していないか? 特に、経営者の個人的な支出に見える経費はNG。 |
| □ 3. 返済原資は確保できているか? | 「税引後利益+減価償却費」が年間返済額を上回っているか? |
| □ 4. 役員報酬は適切か? | 利益を出すために役員報酬をゼロにするのは悪手。「経営者が生活できない会社」と見られる。 |
| □ 5. 債務超過ではないか? | 貸借対照表の純資産がマイナスになっていないか? 解消計画がなければ非常に厳しい。 |
| □ 6. 不要な資産はないか? | 使っていないゴルフ会員権や不動産などはないか?「資金繰りに困っているのでは?」と疑われる。 |
| □ 7. 月次試算表は作成しているか? | 赤字決算の場合の「敗者復活戦」の武器になる。日頃から数字を管理する姿勢が評価される。 |
5.これだけは避けたい!NGになる決算書の落とし穴
融資審査において、議論の余地なく「NG」となる行為があります。
これだけは絶対に避けてください。
(1)粉飾決算
売上を水増ししたり、架空の在庫を計上したりする行為です。バレた瞬間に全取引停止、一括返済を求められることもあります。絶対に手を出してはいけません。
(2)2期連続の赤字(理由なき赤字)
1期目の赤字は外的要因などで説明がつくこともありますが、2期連続となると「事業構造そのものに問題がある」と見なされ、審査のハードルが格段に上がります。
(3)税金の滞納
決算書に「未払法人税等」が多額に残っていたり、納税証明書が提出できなかったりするのは論外です。国に納めるべき税金を払えない会社に、基本的に銀行がお金を貸すことはありません。
6.意外な盲点?決算月を3月からずらすだけで融資が有利になる理由
最後に、私が銀行員時代に「この社長、よく分かっているな」と感じたテクニックを一つお教えします。
それは「決算月を繁忙期(3月)からずらす」ことです。
日本の企業の多くは3月決算です。
そのため、4月〜5月は税理士の先生にとって一年で最も忙しい時期になります。
どうなるか?
どうしても一つ一つの会社に時間をかけられず、事務的に処理する流れ作業になりがちです。
つまり、「節税」を優先した、どこにでもある決算書が出来上がってしまう可能性が高いのです。
一方で、例えば9月や10月決算であれば、税理士の先生も余裕があります。
「先生、来期の融資に向けて、この勘定科目はどう見えますか?」
「銀行向けに、もう少し見栄えの良い決算書にできませんかね?」
といった「戦略的な相談」に乗ってもらう時間を十分に確保できるのです。
会社の設立登記時に決める事項ですが、これから創業する方はもちろん、既存の会社でも事業年度の変更は可能です。顧問税理士と相談してみる価値は十分にあります。
7.まとめ:銀行から信頼される決算書を作るために
融資を成功させるために、下記のポイントを必ず押さえてください。
①決算書は「通信簿」ではなく、銀行への「最強のプレゼン資料」と心得る。
②銀行は「税引後利益+減価償却費」で計算される返済原資を最も重視している。
③過度な節税は、融資の可能性を自ら潰す行為だと知る。
④厳しい状況でも、わずかでも「黒字」を確保する経営姿勢が評価される。
⑤赤字決算の場合は、必ず月次試算表などで「回復の兆し」を数字で示す。
⑥ 粉飾や税金の滞納など、信頼を失う行為は絶対にしない。
⑦ 税理士とじっくり相談するため、決算月を繁忙期からずらすことも有効な戦略である。
8.次のアクションプラン
この記事を読んで、「うちの決算書、大丈夫かな…」と不安になった社長もいるかもしれません。しかし、気づけた今がチャンスです。早速、今日から行動に移しましょう。
(1)直近3期分の決算書と、顧問税理士の名前を手元に準備する。
まずは自社の現状を直視することから始めましょう。
(2)上記の「戦略的決算チェックリスト」を使い、自社の決算書を採点してみる。
どこが強みで、どこが弱みか客観的に把握しましょう。
(3)次の面談時に、顧問税理士に「銀行融資を意識した決算について相談したい」とアポイントを取る。**
あなたの本気度が伝われば、税理士の先生もきっと力になってくれます。
決算書作りは、経営そのものです。
数字と真摯に向き合う経営者を、銀行員は決して見逃しません。
あなたの会社の未来を切り拓くため、ぜひ本日の内容を実践してみてください。
資金繰りが厳しく、資金調達の準備が必要、自社に合った融資制度を知りたい、
手続きが難しそうで進める自信がないなど
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