【中小企業経営者の資金繰り改善マニュアル】案件引当融資を成功させる方法

「受注は順調なのに、なぜか手元の資金がいつもカツカツ…」
「大きな案件を受注したが、先に支払う材料費や外注費が足りない」
多くの中小企業経営者様が抱える、こうした切実な資金繰りの悩み。
この記事は、そんな悩みを解決する強力な武器となりうる「案件引当融資(案件紐付け融資)」について、元銀行員の視点から解説する実践的なマニュアルです。
なぜ審査に通るのか、なぜ断られてしまうのか、その理由と対策を具体的な事例と共に学ぶことで、貴社の資金繰りを劇的に改善させるヒントがここにあります。
この記事に関する目次
1. そもそも「案件引当融資」とは?
案件引当融資(金融機関によっては「案件紐付け融資」とも呼ばれます)とは、一言でいえば「受注した特定の仕事(案件)から将来得られる売上を担保にお金を借りる」融資手法です。
不動産のような物的担保ではなく、将来の入金が約束された「契約」そのものを拠り所にする点が大きな特徴です。
この融資には、金融機関が審査する上で重視する2つの明確なポイントがあります。
(1)資金使途が明確であること:借りたお金を「どの案件の、何の支払いに使うのか」がハッキリしています。
(2)返済原資が確定していること:返済のためのお金が「どの案件の、いつの入金から支払われるのか」が確定しています。
この2点が明確であるため、金融機関は比較的、融資の判断がしやすくなります。
(1)具体例:建設業A社の場合
案件引当融資が最も活用される業種の一つが建設業です。その理由を具体的な事例で見てみましょう。
①状況
建設業を営むA社は、元請けのB社からビルの内装工事を1,000万円で受注しました。支払い条件は、工事完了後の翌月末に一括入金です。
②課題
工事を始めるにあたり、A社は資材の仕入れや職人への人件費で、先に400万円の支払いが必要になりました。しかし、手元の資金は200万円しかなく、このままでは工事に着手できません。
③解決策
そこでA社は、取引銀行に相談。B社との「工事請負契約書」を提出し、将来B社から入金される1,000万円を返済原資として、先行して必要となる資金400万円の「案件引当融資」を申し込みました。
このように、売上の入金よりも支払いが先行してしまう場合に発生する一時的な資金不足を、ピンポイントで補うのが案件引当融資の役割です。
(2)融資の基本ルール
①融資金額
先行して支払う必要がある経費の範囲内です。当然ですが、受注契約金額(この例では1,000万円)を超えることはありません。
②返済期限
原則として、返済原資となる売掛金の入金日です。金融機関によっては、「入金月の末日」など、柔軟に対応してくれる場合もあります。
③必須条件
(ア)契約書の提出:元請業者や施主との「工事請負契約書」「発注書」など、案件の存在、金額、支払条件が確認できる書類が必要です。
(イ)入金口座の指定:案件の売上代金が入金される口座を、融資を受ける金融機関の口座に指定することが絶対条件です。これにより、金融機関は返済原資を確実に管理できます。
2. なぜ審査で断られるのか?金融機関が謝絶する4つの理由
「契約書もあるし、入金もほぼ確実なのになぜ融資を断られたんだ…」という経験はありませんか?案件引当融資は、金融機関にとってリスクの高い融資の一つです。
なぜなら、不動産担保と違い、契約書は「紙切れ」になる可能性があるからです。
実質的には企業の「信用」を担保にする無担保融資に近いため、審査は慎重にならざるを得ません。
金融機関が融資を謝絶する、あるいは今後の取引に慎重になるケースは、主に以下の4つのパターンに集約されます。
理由① 入金口座の約束を破ってしまう
これは最も悪質と見なされるケースで、一発で信頼を失います。
【NG事例】 融資を受けた銀行の口座に入金する約束だったにもかかわらず、「急な支払いができてしまって…」などと言い訳をし、別の銀行口座に売上を入金させてしまった。
さらに、そのお金を別の支払いに使ってしまい、返済ができなくなった。
これは明確な「条件違反」です。金融機関からすれば「計画的に返済資金を抜き取られた」と判断せざるを得ません。
当然、即時一括返済を求められますし、今後その金融機関から案件引当融資を受けられる可能性はゼロに近くなるでしょう。
理由② 入金されたのに返済せず、別の支払いに使ってしまう
入金口座は守っていても、返済に対する意識が低いと見なされるケースです。
【NG事例】月末返済の約束で、月の半ばに売上代金が入金された。しかし、「返済期日はまだ先だから」と、そのお金を別の案件の仕入れ代金や経費支払いに流用してしまった。
金融機関の担当者は、あなたの会社のすべての口座の入出金を四六時中監視しているわけではありません。
しかし、この融資で借りたお金は「特定の案件の入金で返す」という大前提で成り立っています。
入金された時点で、そのお金はもはや貴社のものではなく、「銀行への返済金」です。
これを使い込む行為は、信頼関係を根底から覆す行為であり、理由①と同様に極めて厳しい対応を取られます。
理由③ 契約内容の変更を報告しない
悪意はなくても、報告を怠ることで信頼を損ねるケースです。
【NG事例】工事の途中で仕様変更があり、最終的な受注金額が契約書より100万円減額されることになった。
しかし、その事実を金融機関に報告しないまま、入金日を迎えてしまった。
受注額が増える分には問題ありませんが、減額される場合、金融機関にとっては返済原資が減ることを意味し、回収リスクが高まります。
減額の事実が分かった時点で速やかに金融機関に報告・相談すれば、通常は問題になりません。
しかし、報告を怠ると「都合の悪いことを隠す会社だ」という不信感を与えてしまい、次回以降の審査が厳しくなってしまいます。
理由④ 入金遅延の連絡をしない
これも報告義務の怠慢にあたります。
【NG事例】元請けの都合で、入金が1週間遅れることが判明した。しかし、「まあ1週間くらいなら大丈夫だろう」と高をくくり、金融機関に連絡しなかった。
結果として、返済期日に入金がなく、銀行から催促の電話がかかってきて初めて事情を説明した。
金融機関は契約書に記載された入金予定日を元に返済日を設定しています。遅延が事前に分かっていれば、返済日の変更(リスケジュール)など、柔軟に対応してくれることがほとんどです。しかし、連絡なく返済が遅れると、金融機関は「何か問題が起きたのか?」「経営管理がずさんな会社だ」と判断します。これも、将来の融資取引に悪影響を及ぼす行為です。
3. 案件引当融資を成功に導く「4つの鉄則」
では、どうすれば案件引当融資を円滑に活用できるのでしょうか。金融機関との信頼関係を築き、スムーズな資金調達を実現するための「4つの鉄則」を覚えてください。
【鉄則1】入金口座の指定は「聖域」と心得る
融資を受ける銀行の口座への入金指定は、絶対に守ってください。
これは取引の根幹をなす約束事です。
請求書を発行する際は、振込先口座が融資元の銀行になっているか必ず確認し、その請求書の控えを銀行に提出しておくと、さらに丁寧で信頼性が高まります。
【鉄則2】入金されたら「即」連絡・返済する
返済原資となる売上金が入金されたら、たとえ返済期日が先であっても、すぐに銀行の担当者に「〇〇の案件の入金がありましたので、ご返済します」と一本連絡を入れましょう。
この自主的な行動が「この会社は約束を守る、管理がしっかりしている」という絶大な信頼に繋がります。
【鉄則3】イレギュラーな事態は「即」相談する
「受注額が減りそうだ」「入金が遅れそうだ」といったネガティブな情報ほど、判明した時点ですぐに担当者に相談してください。
隠すことは百害あって一利なしです。
正直に、そして早めに相談することで、銀行は貴社の誠実な姿勢を評価し、共に解決策を考えてくれるパートナーとなります。
【鉄則4】普段からのコミュニケーションを怠らない
案件引当融資は、突き詰めれば「社長、あなたの会社を信じます」という融資です。
そのため、普段から試算表を定期的に提出したり、業況を報告したりして、銀行とのコミュニケーションを密にしておくことが極めて重要です。
いざという時に「いつも頑張っているA社のためなら」と、担当者が親身になって動いてくれるかどうかは、こうした日々の積み重ねで決まります。
4.まとめ
案件引当融資は、受注はあるのに資金が不足しがちな中小企業にとって、事業拡大のチャンスを逃さず、安定した資金繰りを実現するための非常に有効な手段です。
しかし、その本質は「金融機関との信頼関係」の上に成り立つ融資であることを決して忘れてはなりません。
今回ご紹介した「謝絶される理由」は、すべて信頼を損なう行為です。
逆に「4つの鉄則」は、すべて信頼を築くための行動です。約束を守り、正直に、そして迅速にコミュニケーションを取る。
この基本を徹底することが、案件引当融資を成功させ、ひいては貴社の経営を安定させる一番の近道です。
まずは一度、貴社の受注案件の中にこの融資を活用できそうなものがないか確認し、取引銀行の担当者に気軽に相談してみてはいかがでしょうか。
その一歩が、未来の資金繰りを大きく変えるかもしれません。
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