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創業融資は日本政策金融公庫へ!「国民生活事業」と「中小企業事業」の違い

「創業融資なら日本政策金融公庫」と聞き、期待を胸に相談に行ったら「窓口が違います」と門前払い…。
実は、日本政策金融公庫には2つの主要な窓口があり、間違えると話すら聞いてもらえません。
元銀行員の私が、あなたが相談すべき正しい窓口と、融資審査を突破する秘訣を徹底解説します。

1.そもそも日本政策金融公庫とは?

資金調達を考える経営者であれば、一度は「日本政策金融公庫」(以下、公庫)の名を耳にするでしょう。
国の機関らしいけど、銀行と何が違うのか?まずはその正体から、分かりやすく解説します。

公庫は、国が100%出資する政府系の金融機関です。
私たち民間の銀行が利益を第一に追求するのに対し、公庫の使命は「民業の補完」。
つまり、創業したばかりで実績がない、事業規模がまだ小さいといった理由で民間銀行から融資を受けにくい中小企業や個人事業主を、積極的に支援する「中小企業の応援団」なのです。

2.あなたが相談すべきはどっち?「国民生活事業」と「中小企業事業」の違い

さて、ここからが本題であり、多くの経営者が最初に躓くポイントです。
日本政策金融公庫には大きく分けて「国民生活事業」と「中小企業事業」という2つの窓口があり、それぞれ対象とする企業が全く異なります。
この記事を読んでくださっている創業期〜成長期の中小企業経営者の皆様、あなたが相談すべき窓口は、ほぼ100%「国民生活事業」です。

3.なぜ窓口を間違えると「門前払い」されるのか?

「同じ公庫なんだから、どっちでもいいだろう」と思われるかもしれません。
意気揚々と「日本政策金融公庫 中小企業事業の窓口」に相談に行き、「お客様の規模ですと、国民生活事業の窓口になります」と事務的に案内された経営者を見てきました。

これは、両事業がもともと別の金融機関(国民生活金融公庫と中小企業金融公庫)だったものが統合されたという歴史的経緯があるからです。
そのため、今でも担当する企業の規模や融資額が明確に分かれており、役割が全く違うのです。

4.一目でわかる!国民生活事業 vs 中小企業事業 比較表

百聞は一見に如かず。
あなたの会社がどちらに当てはまるか、この表で確認してください。

比較項目 国民生活事業 中小企業事業
主な対象 創業者、個人事業主、フリーランス、小規模企業 比較的規模の大きい中小企業(中堅企業)
従業員規模の目安 おおむね数十名程度まで おおむね数十名~数百名規模
売上規模の目安 創業期~3億円(凡その目安) 3億円以上(凡その目安)
融資額のイメージ 1件あたり数百万円~1,000万円程度が中心。 1件あたり数千万円~数億円規模の長期・大口資金。
融資の特徴 創業融資、小口の運転・設備資金 大規模な設備投資、事業承継、海外展開支援、運転資金
審査の視点 経営者の人物像や経験、自己資金、事業計画の熱意と具体性 財務内容の分析、事業の成長戦略、業界でのポジション

この表を見れば明らかですね。
これから事業を始める方、従業員が数名〜30名程度の会社であれば、相談先は「国民生活事業」一択です。

5.事例で学ぶ!窓口選びと準備が明暗を分けた3つのケース

この「窓口選び」が、いかに重要か。実際の事例を見ていきましょう。

【成功事例①】年商2,000万円のデザイン事務所A社(創業3年目)
融資希望額 800万円(運転資金)
結果 満額承認
評価されたポイント A社社長は、自社の規模から迷わず国民生活事業にアポイントを取りました。面談では、創業以来コツコツと増やしてきた取引先リストと、今後の受注見込みを具体的な事業計画書に落とし込み、「この資金があれば、さらに2名のデザイナーを雇用し売上を倍増できる」と熱意をもって説明。公庫担当者も、経営者の人物像と事業の将来性を高く評価し、満額での融資審査通過となりました。
【成功事例②】年商5億円の部品メーカーB社(事業承継)
融資希望額 2億円(株式取得資金)
結果 満額承認
評価されたポイント  B社は先代からの事業承継にあたり、多額の資金が必要でした。年商規模、融資希望額から中小企業事業」が適切と判断。財務担当役員が中心となり、緻密な財務分析資料と、承継後の経営改善計画を提示しました。これはまさに中小企業事業が求める専門性と計画性であり、長期的な視点での支援が決まりました。
【失敗事例】年商8,000万円のITサービス業C社
融資希望額 1,500万円(設備資金)
結果 減額回答
評価されたポイント  C社社長は「うちはもう零細じゃない」という自負から、いきなり中小企業事業の窓口に相談。しかし、担当者からは「年商規模、ご希望額ともに国民生活事業さんの領域ですね」とやんわり指摘されました。プライドを傷つけられた社長は、その後の国民生活事業での面談でもどこか不満げな態度を取ってしまい、事業への熱意が伝わらず、結果は減額回答。正しい窓口選びと謙虚な姿勢の重要性を示す事例です。

6.公庫は本当に「借りやすい」のか?

「国民生活事業が窓口なのは分かった。で、結局借りやすいの?」という声が聞こえてきそうですね。

確かに、創業実績ゼロでも話を聞いてくれる点では「借りやすい」と言えます。
しかし、「審査が甘い」と考えるのは大きな間違いです。日本政策金融公庫は信用保証協会とは異なり、自らが貸し手。
だからこそ、銀行とも違う独自の視点で、あなたの事業を厳しく見極めます。

特に重視されるのは、創業期の場合は、経営者の人物像、事業への経験、そして何より「どうやって自己資金を貯めてきたか」というプロセスです。
見せかけの資金ではなく、毎月コツコツ貯めた通帳は、何より雄弁にあなたの本気度を物語ります。

7.公庫融資に関する素朴な疑問

Q1. 金利が安くなる「特別貸付」は絶対に狙うべき?

A1. 女性、若者、シニアなどを対象とした「特別貸付」は、確かに金利が優遇され、資金繰りが楽になります。しかし、審査が有利になるわけではありません。
あくまで審査基準をクリアした上での特典と考え、過度な期待はしないようにしましょう。

Q2. 融資審査が通りやすい「狙い目の時期」って本当にあるの?

A2. 声を大には言えませんが…傾向として「あります」。公庫も期末の9月・3月は融資目標達成に向けて動きます。
この時期を狙い、2月や8月から準備を進めて相談するのは有効な戦略です。
ただし、事業計画が杜撰では全く意味がないことは言うまでもありません。

8.まとめ:公庫を味方につけるための5つの鉄則

(1)相談窓口は「国民生活事業」一択:創業期〜成長期の中小企業は、迷わず国民生活事業へ。
(2)窓口の違いを理解する:国民生活事業は「人」と「熱意」、中小企業事業は「財務」と「戦略」を重視する。
(3)「借りやすい=審査が甘い」ではない:公庫独自の審査基準があり、特に自己資金の形成過程が重要。
(4)自分の言葉で語る:税理士任せの事業計画書ではなく、経営者自身の言葉で事業の未来と情熱を伝える。
(5)時期を狙う戦略も有効:9月・3月の期末はチャンスだが、計画の質が大前提。

9.次のアクションプラン

さあ、知識を行動に変えましょう。融資実現への第一歩です。

(1)公庫のウェブサイトを確認する
まずは公式サイトでを見て、雰囲気を掴みましょう。

(2)最寄りのの支店を探す
公庫のサイトで、あなたが相談すべき支店の場所と連絡先を確認しておきましょう。

(3)所定の書式を埋めてみる
所定の書式にもとずき、なぜ自分がこの事業をやるのか、どんな経験や強みがあるのか。ここをしっかり書くことから、公庫対策は始まります。

正しい窓口を選び、万全の準備をすれば、日本政策金融公庫はあなたの事業にとって最も心強い味方になります。
自信を持って、その扉を叩いてください。



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