金融機関視点から解説する「危機対応後経営安定資金(セーフティネット貸付)」の活用法
コロナ禍で活用された日本政策金融公庫(以下、公庫)からの融資の本格的な返済フェーズが始まり想定以上の返済負担に直面されている経営者様も少なくありません。
本稿では、そうした状況を緩和するための「危機対応後経営安定資金」(通称:セーフティネット貸付)について実務的観点から説明いたします。
この記事に関する目次
1. セーフティネット貸付の概要
セーフティネット貸付は単なる返済猶予策ではなく、事業継続と経営改善を支援するための公庫による制度融資です。
具体的には、コロナ禍などの影響で既存の借入金返済が重荷となっている事業者に対し、より長期的な視点で返済計画を組み直すことができる仕組みです。
この制度は単に「借り換え」をするだけでなく、経営の立て直しに向けた「時間的猶予」を得るための有効な手段です。
2. 利用条件と審査のポイント
(1)対象となる融資が存在すること
次のいずれかの貸付制度等にかかる貸付残高を有する方
①新型コロナウイルス感染症特別貸付
②新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付
③新型コロナウイルス感染症にかかる衛生環境激変特別貸付
④危機対応後経営安定資金(セーフティネット貸付)
(2)債務負担が重くなっている
定量的な「債務負担過大」の証明
※債務償還年数が13年以上であること
(計算式:(有利子負債−現金預金)÷(減価償却費+営業利益))
(3)定性的な「事業継続性」の確認
①中長期的な業績回復見込みがあること
②事業改善への具体的な取り組みがあること
「コロナ資本性ローン」を利用の方は注意が必要です。
この融資は原則として期日一括返済となっており返済期日に向けた計画的な準備が重要です。
資金繰り状況に不安がある場合は、早めにセーフティネット貸付の活用をご検討いただくことをお勧めします。
3. 債務償還年数の正しい理解と計算方法
「債務償還年数13年以上」という条件は審査において非常に重要な判断基準となります。
この数値は、現在の借入金を現在のキャッシュフローで返済した場合、何年かかるかを表します。
【計算の実例 】
仮に以下のような財務状況の場合
・有利子負債:8,000万円
・減価償却費:300万円
・営業利益:300万円
債務償還年数は 8,000万円 ÷ (300万円 + 300万円) = 13.3年
この例では13.3年となり、基準の13年を超えるため「債務負担が重い」と判断される可能性が高いです。
4. 危機対応後経営安定資金の概要
①資金のお使いみち:既往債務の返済負担軽減のために必要とする運転資金
②融資限度額:7,200万円(別枠)
③利率(年):基準利率
④返済期間:20年以内(うち据置期間2年以内)
⑤担保・保証人:お客さまのご希望を伺いながらご相談させていただきます。
※併用できる特例制度
・経営者保証免除特例制度
・賃上げ貸付利率特例制度
5. 申請から実行までのプロセス
セーフティネット貸付の申請から実行までの流れは以下の通りです。
(1)事前相談もしくは申込:公庫の窓口に相談もしくは申込
(2)必要書類の準備
・直近2期分の決算書
・試算表(直近のもの)
・事業計画書
・既存借入の返済予定表
・資金繰り表(求められた場合)
(3)申込み・審査:書類提出と面談
(4)融資実行:審査通過後、約2〜3週間程度
金融機関目線では、特に「事業計画書」の質を重視します。
単に返済負担を軽減するだけでなく、今後どのように事業を立て直していくのかという具体策が明確であることが、審査通過の鍵となります。
6. アドバイス
(1) 早めの相談が肝心
資金繰りが逼迫してからでは選択肢が限られます。
余裕をもって相談することをお勧めします。
(2) 経営改善への具体的取り組み
単に返済条件の変更だけでなく収益性向上のための具体策(経費削減、新規顧客開拓など)も併せて提示できると、審査上のプラス評価につながります。
(3) 財務状況の透明な開示
現状を正確に伝え、公庫と信頼関係を構築することが長期的支援につながります。
(4) 返済シミュレーションの実施
新しい返済計画が自社の資金繰りに無理なく対応できるか、しっかりとシミュレーションしましょう。
7.まとめ
セーフティネット貸付は、コロナ禍で影響を受けた事業者の方々が経営再建に向けて時間的余裕を得るための有効な手段です。
重要なのは、単に返済負担を先送りするのではなく、その猶予期間中に事業の立て直しを図ることです。
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- 手続きはが難しそうで、自分ではなかなか進められない。
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