「また融資を断られた…」はもう卒業。資金繰りを好転させる事業報告書の作り方

「なぜ、うちの会社の魅力が銀行に伝わらないんだ…」「決算書だけでは、伝えきれない想いがあるのに…」融資の場面で、そんな悔しい思いをされたことはありませんか?
この記事を読めば、決算書の数字だけでは見えない貴社の真の価値を伝え、銀行からの評価を劇的に変える「事業報告書」の書き方が分かります。
自信を持って銀行と対話し、未来を切り拓く資金調達を実現しましょう。
この記事に関する目次
はじめに:なぜあなたの会社の「価値」は銀行に伝わらないのか?
多くの熱意ある経営者が、資金繰りに頭を悩ませ、銀行との交渉に苦労されている姿を目の当たりにしてきました。
資金繰りは、事業を動かす「血液」です。
それが滞れば、どんなに素晴らしい事業も立ち行かなくなってしまいます。
特に、決算書を銀行に提出する際、多くの経営者が陥る「もったいない失敗」があります。
それは、決算書だけをポンと提出して、あとは口頭説明で済ませてしまうことです。
私が銀行員だった頃、一日に何十社もの決算書に目を通します。
正直に申し上げて、口頭での説明は、その場では分かったつもりになっても、数日経てば記憶は薄れてしまいます。
そして、稟議書を書く段になって思い出すのは、結局のところ「書面に残っている情報」だけなのです。
そこで今回、私が現役時代に「お、この会社は分かっているな」と評価し、融資を前向きに検討した企業が実践していた、ある一手間についてお話しします。
それが、決算書に「事業報告書」を添付することです。
この記事では、なぜ事業報告書が融資審査で効果を発揮するのか、そして銀行員が唸る報告書をどう書けばいいのか、私の経験を全て注ぎ込んで解説していきます。
少しの手間が、あなたの会社の未来を大きく変えるかもしれません。
1. なぜ「事業報告書」一枚で銀行の評価は変わるのか?
「事業報告書なんて、事業計画書とどう違うんだ?」「そんな書類を作る時間はないよ」そう思われる気持ちもよく分かります。
しかし、銀行内部の視点から見ると、その重要性は計り知れません。
(1)銀行は徹底した「書面主義」
銀行員は、あなたの会社への融資を「稟議書」という書類にまとめて上司や本部に説明し、承認を得なければなりません。
その際、担当者の個人的な感想、例えば「社長は熱意があって良い人です」といった言葉は、残念ながら何の効力も持ちません。
稟議書に書けるのは、客観的な事実と、それを裏付ける資料(書面)に基づいた分析だけです。
決算書だけでは、数字の羅列に過ぎません。
なぜ売上が伸びたのか、なぜ利益が減ったのか、その「物語」が分からなければ、担当者はあなたの会社の本当の姿を上司に説明できないのです。
事業報告書は、その「物語」を伝えるための、担当者が稟議書を書きやすくなるための「最強の武器」になるのです。
(2)「その他大勢」から抜け出すための差別化戦略
ここだけの話ですが、決算書に丁寧な事業報告書を添付してくる会社は、全体の2割にも満たないでしょう。
多くの会社が決算書のみを提出する中で、分かりやすくまとめられた事業報告書があれば、それだけで「この経営者は、自社の状況を客観的に把握し、きちんと説明する意識がある」と、他社よりも一歩抜きん出た評価を得ることができます。
2. 融資の明暗を分けた「事業報告書」3つの実例
言葉だけではイメージが湧かないでしょうから、私が実際に見てきた事例をご紹介します。
(1)【成功事例①】赤字決算から希望額満額の追加融資を獲得した製造業A社
| 企業概要 | 年商8,000万円の金属部品メーカー |
| 融資希望 | 運転資金として1,000万円 |
| 審査結果 | 希望額1,000万円の満額承認 |
| 状況 | 前期決算が500万円の赤字。通常なら審査は非常に厳しくなります。 |
A社は決算書提出の際、1枚の事業報告書を添付しました。
そこには、赤字の要因が「主要取引先の倒産による想定外の貸し倒れ」という一過性のものであること、そして既に新規販路を3社開拓し、今期は黒字化の見通しが立っていることが具体的な受注見込み額と共に記載されていました。
【評価されたポイント】
◎ 赤字の要因を他責にせず、客観的に分析していた点。
◎ 具体的な数値目標を伴う、実現可能な再建策が示されていた点。
◎ 口頭だけでなく書面で示すことで、計画の信憑性が格段に増した点。
もし決算書だけだったら、「業績不振の会社」というレッテルを貼られ、減額か最悪の場合は謝絶(融資否決)になっていた可能性が高い案件でした。
(2)【成功事例②】将来性をアピールし、新規事業資金を獲得したITサービス業B社
| 企業概要 | 年商5,000万円のWeb制作・コンサル会社 |
| 融資希望 | 新規SaaS開発のための設備・人件費として1,500万円 |
| 審査結果 | 希望額1,500万円の満額承認 |
| 状況 | 既存事業は安定しているものの、大きな伸びはない状態。新規事業はまだ売上がゼロ。 |
B社は、事業報告書の中で、新規事業の市場規模のデータ、競合サービスの分析、自社サービスの優位性、そして3年後までの具体的な売上・利益計画(KPI含む)を見事に示しました。
【評価されたポイント】
◎ 夢物語ではなく、市場調査に基づいた客観的なデータで事業の将来性を示した点。
◎ 必要な資金額の根拠(サーバー代、エンジニア人件費など)が明確だった点。
◎ 経営者のビジョンと、それを達成するための道筋がロジカルに説明されていた点。
銀行は「過去の実績」を重視しますが、同時に「未来への投資」も行います。B社の事業報告書は、我々銀行員に「この未来に賭けてみたい」と思わせるに足る、説得力のあるものでした。
(3)【失敗事例】口頭説明に終始し、減額回答となった飲食業C社
| 企業概要 | 年商3,000万円の地域密着型レストラン |
| 融資希望 | 運転資金として500万円 |
| 審査結果 | 300万円に減額して承認 |
| 状況 | 売上が前年比15%減少し、資金繰りが悪化。 |
C社の社長は、決算書だけを持って面談に来られました。
売上減少の理由を尋ねると、「コロナの影響もあって、お客さんが減ってしまって…。
でも、これから新メニューも考えて頑張ります!」と熱意は伝わってきました。
しかし…。
【問題視されたポイント】
× 売上減少の具体的な分析(客単価の減少?来店客数の減少?)がなかった点。
× 「頑張ります」という精神論に終始し、新メニューで「いくら売上を回復させるのか」という具体的な計画がなかった点。
× 書面での補足資料が一切なく、稟議書に書ける前向きな材料が乏しかった点。
担当者としては心苦しいのですが、これでは「計画性が見えないため、回収リスクが高い」と判断せざるを得ません。
結果として、当座を凌ぐための最低限の金額しか承認できませんでした。
3. 【元融資課長が直伝】銀行員を唸らせる事業報告書の書き方
難しく考える必要はありません。
A4用紙1〜2枚で結構です。
以下の3つの要素を、誠実に、分かりやすく書くことを心がけてください。
(1)前期事業内容の振り返り(「言い訳」ではなく「分析」を!)
決算書の数字をなぞるだけでは意味がありません。銀行員が見たいのは、その数字の裏側にあるストーリーです。
①売上・利益の増減要因
なぜ増えたのか?(例:新規顧客開拓が成功、リピート率が向上)なぜ減ったのか?(例:競合店の出店、原材料の高騰)
②良かった点(強み)
好調だった事業や施策について、その成功要因を具体的に書きます。
「なぜ上手くいったのか」を自社で分析できている点は高く評価されます。
③反省点と課題(弱み)
ここが最も重要です。上手くいかなかったことを隠さず「これが原因でした。今後はこう改善します」という姿勢を見せてください。
失敗を認め、次につなげる姿勢は、信頼に直結します。
(2)当期の事業計画(「夢物語」ではなく「根拠ある計画」を!)
前期の反省を踏まえ、今期どう動くのかを具体的に示します。
①数値目標
「売上〇〇円、利益〇〇円を目指します」と明確に宣言します。
②具体的なアクションプラン
その目標を達成するために、「何を」「いつまでに」「どうするのか」を記述します。(例:「新規顧客獲得のため、4月からWeb広告の出稿を開始し、毎月5件の問い合わせ獲得を目指す」「業務効率化のため、〇〇システムを7月に導入し、人件費を月5万円削減する」)
③資金使途(融資を希望する場合)
融資で得た資金を「何に」「いくら」使うのかを明確にします。
これが曖昧だと、銀行は「資金管理ができない会社」と見なします。
(3)前期損益(実績)と当期損益(計画)の比較表(一目瞭然がベスト!)
文章だけでなく、簡単な表で示すと、担当者はさらに理解しやすくなります。前期の実績と当期の計画を並べて比較できるようにしましょう。
4.【テンプレート付】そのまま使える!損益比較表の作成例
以下は、事業報告書に挿入する損益比較表のサンプルです。
これを参考に、自社の数字を入れてみてください。
「増減理由・計画の根拠」の欄が、あなたの会社の「物語」を語る上で非常に重要です。
| 勘定科目 | 前期実績 (XXX1年3月期) | 当期計画 (XXX2年3月期) | 増減額 | 増減理由・計画の根拠 |
| 売上高 | 100,000千円 | 120,000千円 | +20,000千円 | ・新規販路(B社向け)の開拓により+1,500万円 ・既存顧客へのアップセル強化で+500万円 |
| 売上原価 | 60,000千円 | 70,000千円 | +10,000千円 | |
| 売上総利益 | 40,000千円 | 50,000千円 | +10,000千円 | |
| 販管費 | 35,000千円 | 38,000千円 | +3,000千円 | ・Web広告費の増加(+200万円) ・新規採用1名分の人件費(+300万円) ・業務システム導入による経費削減(-200万円) |
| 営業利益 | 5,000千円 | 12,000千円 | +7,000千円 | |
| 経常利益 | 4,500千円 | 11,500千円 | +7,000千円 |
5.【想定問答集】事業報告書に関する「よくある質問」
経営者の方からよくいただく質問に、元銀行員の視点からお答えします。
Q1. 赤字決算なのですが、正直に書いても大丈夫でしょうか?
A1. はい、むしろ正直に書くべきです。 隠そうとしても、決算書を見れば一目瞭然です。
重要なのは、赤字の事実そのものではなく、
①赤字の要因が何か(一過性か、構造的か)、
②その要因をどう分析しているか、
③黒字化に向けた具体的なアクションプランは何か、
の3点です。
これを事業報告書で論理的に説明できれば、赤字でも融資の道は拓けます。
Q2. 事業報告書と、本格的な事業計画書はどう使い分ければいいですか?
A2.良い質問ですね。私はよく、事業報告書は「会社の健康診断結果と、短期の改善プラン」、事業計画書は「数年後を見据えた、抜本的な肉体改造プラン」と説明しています。
決算報告時の添付資料としては、
まず簡潔な事業報告書で十分です。
大規模な設備投資や新規創業など、数千万円以上の大型融資を申し込む際に、より詳細な事業計画書の提出を求められるイメージです。
Q3. どれくらいの分量で書けばいいですか? 長い方が熱意が伝わりますか?
A3. いいえ、逆です。A4用紙1枚、多くても2枚にまとめてください。
銀行員は多忙です。
要点がまとまっていない長文のレポートは、敬遠されてしまいます。
「要点を簡潔にまとめる能力がある」こと自体が、経営能力の評価につながると考えてください。
6.【提出前に最終確認】一発NGを避けるための7つのチェックリスト
渾身の事業報告書が、些細なミスで評価を下げてしまっては元も子もありません。提出前に、必ず以下を確認してください。
[ ] 決算書の数字と、事業報告書の数字に矛盾はないか?
[ ] 専門用語や業界用語ばかりで、素人に伝わらない内容になっていないか?
[ ] 「頑張ります」「努力します」といった精神論に終始していないか?
[ ] 売上や利益の計画が、根拠のない楽観的な数字(夢物語)になっていないか?
[ ] 課題や反省点から目を背けず、正直に記載しているか?
[ ] 誤字・脱字はないか?(資料の正確性は、会社の信頼性に直結します)
[ ] 第三者(例えば顧問税理士や家族)が読んで、内容を理解できるか?
7.まとめ:事業報告書は、あなたの会社の「未来を語る翻訳機」
今回は、融資審査を有利に進めるための「事業報告書」について、私の経験を交えながら解説しました。最後に、本日の要点をまとめます。
・銀行は徹底した「書面主義」。口頭説明だけではあなたの会社の魅力は伝わらない。
・事業報告書は、決算書の数字の裏にある「物語」を伝え、担当者が稟議書を書きやすくするための最強の武器である。
・丁寧な事業報告書を提出するだけで、「その他大勢」から抜け出し、好印象を与えられる。
・成功事例に共通するのは、客観的な分析と、根拠のある具体的な未来への計画が示されていること。
・失敗の要因を隠さず、改善策と共に示すことで、逆に信頼は高まる。
・A4用紙1〜2枚でOK。要点を簡潔にまとめることが重要。
・事業報告書は、あなたの会社の価値と未来を、銀行員に分かる言葉で伝えるための「翻訳機」の役割を果たす。
「面倒だ」「時間がない」と感じるかもしれません。
しかし、そのわずかな手間が、数百万、数千万円の資金調達の成否を分け、会社の未来を大きく左右する可能性があるのです。
あなたの会社の価値を、想いを、そして未来を、正しく伝えるために。
この事業報告書というツールを、ぜひ活用してください。
あなたの挑戦を、心から応援しています。
8.次のアクションプラン
この記事を読んで「やってみよう」と思われた社長へ。まずは、以下の3つのステップから始めてみましょう。
(1)直近の決算書と、前期の自分のスケジュール帳や日報を見返す。
(どんな出来事があり、業績にどう影響したかを思い出しましょう)
(2)本記事のテンプレートを参考に、まずは骨子だけでも書き出してみる。
(完璧を目指さず、キーワードを書き出すだけでも大きな一歩です)
(3)顧問税理士に相談し、客観的な視点でレビューしてもらう。
(第三者の視点を入れることで、独りよがりな内容になるのを防げます)
資金繰りが厳しく、資金調達の準備が必要、自社に合った融資制度を知りたい、
手続きが難しそうで進める自信がないなど
元銀行員が融資獲得まで
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- 資金繰りが厳しく、資金調達の準備をしなければ心配。
- 自分に合った融資制度を知りたい。
- 手続きはが難しそうで、自分ではなかなか進められない。
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