「追加融資、いかがですか?」に即答できる!銀行が評価する提出資料と面談のコツ

「最近、銀行の担当者から『追加融資はいかがですか?』と打診されたが、どう準備すれば…」
「事業拡大のため追加融資を申し込みたいが、一度断られた経験から自信がない…」
経営者であるあなたは、今こんな悩みを抱えていませんか?
この記事を読めば、銀行が追加融資の審査で本当に見ているポイントが分かり、自信を持って交渉に臨むための具体的な準備と「加点資料」の作り方が手に入ります。
この記事に関する目次
はじめに:なぜ「追加融資」の交渉は難しいのか?元銀行員が語る本音
多くの経営者様が「追加融資」のハードルを高く感じていらっしゃいます。
銀行から「追加融資はいかがですか?」と声がかかることもあれば、自ら申し込む場合もあるでしょう。
しかし、どちらの場合も、初回の融資より審査が甘くなるわけでは決してありません。
ここだけの話ですが、銀行員が追加融資を審査する際、頭の中は2つのことでいっぱいです。
・「既存の貸付金は、きちんと返してもらえるだろうか?」(保全の視点)
・「新たな融資で、この会社は本当に成長し、返済能力が高まるのか?」(新たなリスク評価)
つまり、過去の実績評価と未来の成長性の両方を、より厳しく見ているのです。
だからこそ、ただ「お願いします」と頭を下げるだけでは不十分。
「この会社なら大丈夫だ」と銀行員を安心させ、稟議書を書く担当者の背中を押してあげるための「戦略的な資料」が不可欠になります。
今回は、そのための具体的な方法を解説していきます。
1.銀行担当者を唸らせる!追加融資で差がつく「加点資料」3選
決算書や試算表といった基本資料は当然必要です。
しかし、ライバル企業と差をつけ、担当者に「この経営者は分かっているな」と思わせるためには、以下の「加点資料」を先回りして提出することが重要です。
(1) 納税証明書:「健全性の証明書」
「納税証明書なんて、言われてから出せばいいだろう」
そう考えている経営者様、それは非常にもったいない!
納税証明書は、融資審査の最終盤で必ず求められる書類です。
これを申込時に自ら提出することで、絶大な効果を発揮します。
【銀行員の本音】
銀行員は納税証明書を見ることで、以下の2点を確認しています。
・簿外債務(隠れ負債)がないか?
・税金の滞納で資金繰りを回すような、危険な状態に陥っていないか?
税金の支払いは国民の義務であり、これを滞納している会社は「コンプライアンス意識が低い」「資金管理が杜撰」と見なされ、一発で信用を失います。
申込時に綺麗な納税証明書をサッと提出されると、担当者は「この会社は、足元がしっかりしているな」と、まず安心します。
この「最初の安心感」が、その後の審査の流れを非常にスムーズにするのです。
どの証明書が必要か分からなければ、事前に担当者に確認し、申込時に必ず添付するようにしましょう。
(2) 資金繰り表:「未来への航海図」
多くの経営者様が作成を面倒に感じる「資金繰り表」。
しかし、これこそが追加融資の成否を分ける最重要資料と言っても過言ではありません。
決算書(損益計算書)は過去の実績ですが、資金繰り表は「未来のお金の流れ」を示す唯一の資料です。
「勘定合って銭足らず」という言葉がありますが、帳簿上は黒字でも、売掛金の入金サイトが長く、仕入代金や経費の支払いが先に来れば、会社の現金はショートしてしまいます(黒字倒産)。
銀行は、融資したお金が「何に使われ(資金使途)」「何で返ってくるのか(返済原資)」を最も重視します。
資金繰り表は、この2大テーマに対する完璧な回答用紙なのです。
【元銀行員だから話せる!資金繰り表のココを見ている】
私が融資稟議書を作成する際、必ずと言っていいほど「資金繰り、資金使途、資金回収に懸念なく、本件融資について前向きに対応致したい」という一文を入れました。
そして、その根拠として添付するのが、この資金繰り表です。
・融資実行後の残高推移:融資を受けて、資金残高がどう推移し、本当に資金繰りが改善するのか。
・返済月の資金状況:毎月の返済額を支払っても、資金がショートしないか。
・資金使途の妥当性:設備投資なら、その支払時期と金額が計画と一致しているか。運転資金なら、売上増加に伴う仕入増や人件費増をカバーできているか。
日頃から作成していなくても、融資申込を機に、最低でも向こう1年間の実績・予測資金繰り表を作成してください。
これは、あなたの会社の未来を語る、何より雄弁な資料となります。
(3) 受注・売上が分かる書類:「返済能力の裏付け」
事業計画で「来期は売上が20%アップします!」と語っても、銀行員は「本当ですか?その根拠は?」と心の中で疑っています。
その疑念を払拭し、計画の信憑性を一気に高めるのが、未来の売上を裏付ける客観的な証拠です。
具体的には、以下のような書類が有効です。
・受注が確定している案件の「契約書」や「発注書」
・受注内示が出ている案件の「見積書」や担当者との「メールのやり取り」
・継続的な取引先からの「次期の発注見込み書」
もし、こうした書類をまとめた「受注一覧表」や「工事進捗一覧表」などを日頃から作成していれば、それも素晴らしい資料になります。
たとえ綺麗な表にまとめられていなくても、契約書や発注書のコピーを複数件まとめて「進行中の案件です。これらの売上が来月以降入金されます」と渡すだけでも、効果は絶大です。
口頭での説明に動かぬ証拠を添える。
これが信頼を勝ち取る鉄則です。
2.事例で学ぶ!追加融資の成否を分けたポイント
百聞は一見に如かず。事例から成否を分けたポイントを見ていきましょう。
(1)【成功事例①】精緻な資金繰り表で設備投資資金を獲得した製造業B社
| 企業概要 | 年商8,000万円の金属加工業 |
| 融資希望 | 1,500万円(最新加工機の導入資金) |
| 審査結果 | 満額承認 |
【評価されたポイント】
・向こう3年間の投資回収計画を盛り込んだ資金繰り表を提出。
・「新設備導入により、生産性が30%向上し、大手C社からの新規受注に対応可能。
その結果、月々の粗利が〇〇円増加し、返済原資を十分に確保できる」というストーリーを数字で明確に証明した。
・社長自身が資金繰り表の内容を完璧に把握し、面談での質問に淀みなく答えられた点も高く評価された。
(2)【成功事例②】受注見込み資料で運転資金を確保したITサービス業A社
| 企業概要 | 年商5,000万円のITサービス業 |
| 融資希望 | 1,000万円(事業拡大に伴う人件費・外注費の先行支払い資金) |
| 審査結果 | 満額承認 |
【評価されたポイント】
・大手クライアントとの基本契約書に加え、今後半年間の発注見込みが分かるメールのやり取りを印刷して提出。
・「この大型案件に対応するため、エンジニアを2名増員する必要がある。そのための先行資金です」と、資金使途と将来の売上増をセットで具体的に説明した。
* これにより、銀行は「一時的に資金は減るが、半年後には大きな回収が見込める」と判断できた。
(3)【失敗事例】納税の遅れを隠して信頼を失った飲食業C社
| 企業概要 | 年商3,000万円の飲食業 |
| 融資希望 | 500万円(コロナ禍後の集客施策のための運転資金) |
| 審査結果 | 否決 |
【問題視されたポイント】
・資金繰りが厳しく、実は消費税の納付が遅れていた。
・面談で納税状況を聞かれた際に「問題ありません」と回答。しかし、後日銀行が納税証明書の提出を求めたところ、提出を渋り、最終的に滞納の事実が発覚。
・資金繰りの厳しさ以上に、「経営者が嘘をついた」という事実が致命的となり、信頼関係が完全に崩壊。審査は即打ち切りとなった。
3.追加融資の準備チェックリスト&想定問答集
このチェックリストと想定問答集を使って準備を整えましょう。
(1)提出資料の最終チェックリスト
| チェック項目 | 何を確認するか? |
| 【基本資料】 | |
| □ 決算書(直近2〜3期分) | 税理士に依頼 |
| □ 試算表(直近月まで) | 赤字の場合は原因と対策を説明できるように |
| □ 会社の登記簿謄本、定款 | |
| 【加点資料】 | |
| □ 納税証明書 | 税務署で取得。未納がないことの証明 |
| □ 資金繰り表(実績6ヶ月+予測12ヶ月) | 融資実行後の資金の流れが分かるか |
| □事業計画書 | 今回の融資で会社がどう成長するのか |
| □ 受注・売上が分かる書類 | 契約書、発注書、見積書、メールなど |
| □ 設備投資の見積書 | 設備資金の場合 |
| □ 借入金返済予定表 | 他行からの借入状況を正確に伝える |
(2)銀行面談・想定問答集 (Q&A)
銀行員がする質問には、必ず「意図」があります。
その意図を理解し的確に答えられるように準備しておきましょう。
Q1. なぜ今、追加の資金が必要なのですか?
質問の意図:資金使途の明確性と緊急性の確認。
【良い回答例】
「現在、大手クライアントから大型案件の打診を受けており、対応のためにエンジニアを2名増員する必要があります。その採用費と半年分の人件費として、運転資金1,000万円が必要です。このチャンスを逃したくないため、今このタイミングでご相談に上がりました。」
【悪い回答例】
「なんとなく手元資金が不安なので…」
Q2. この資金で、売上や利益は具体的にどう変わりますか?
質問の意図:投資対効果と返済能力の確認。
【良い回答例】
「はい、提出した事業計画書の通り、この設備を導入することで生産性が30%向上し、年間〇〇円のコスト削減が見込めます。これにより、営業利益が〇%改善し、返済原資は十分に確保できる計画です。」
【悪い回答例】
「売上は…上がると思います。頑張ります。」
Q3. 万が一、計画通りに進まなかった場合、どうしますか?
質問の意図:リスク管理能力の確認。経営者の誠実さを見ている。
【良い回答例】
「もちろん計画達成に全力を尽くしますが、最悪のケースとして、売上が計画の70%に留まった場合のシミュレーションも行っています。その場合でも、役員報酬の一時的なカットや経費削減で〇〇円を捻出し、返済は滞りなく実行できます。その際の修正資金繰り表がこちらです。」
【悪い回答例】
「計画通り行かないなんてことはあり得ません!」
5.これはNG!追加融資で絶対にやってはいけない3つのこと
最後に、これだけは絶対に避けてほしいNG行為をお伝えします。
これをやってしまうと、今後の銀行取引にまで悪影響を及ぼしかねません。
(1)資金使途をごまかす
赤字補填や他行借入の返済が目的であるにもかかわらず「設備投資資金」などと偽って申し込むのは最悪です。
銀行は必ずお金の流れを追跡します。嘘がバレた瞬間に信頼はゼロになります。
(2)都合の悪い情報を隠す
前述の失敗事例のように、納税の遅延、社会保険料の滞納、他行での返済条件緩和(リスケ)などを隠すのはやめてください。
銀行は信用情報機関、納税証明書、納付書、返済予定表などを通じていずれ把握します。
「隠していた」という事実が、内容以上に心証を悪化させます。
(3)根拠のない強気な事業計画
「売上倍増!」といった威勢のいい計画も、その根拠となる契約書や具体的なアクションプランがなければ「絵に描いた餅」と判断されます。
希望的観測ではなく、現実的な数字の積み上げで計画を語ってください。
6.まとめ:追加融資を成功に導くための7つの鉄則
追加融資というハードルを越えるために、以下の7つを心に刻んでください。
【鉄則1】追加融資は初回より厳しいと心得るべし。
【鉄則2】納税証明書は「健全性の証明」として、先回りして提出すべし。
【鉄則3】資金繰り表は「未来への航海図」。融資の必要性と返済能力を数字で語るべし。
【鉄則4】事業計画の裏付けとして、契約書や発注書などの「客観的な証拠」を揃えるべし。
【鉄則5】銀行員の質問の「意図」を読み、的確な回答を準備すべし。
【鉄則6】都合の悪い情報こそ、誠実に打ち明け、対策をセットで語るべし。
【鉄則7】資金使途をごまかすなど、銀行との信頼関係を壊す行為は絶対に避けるべし。
7.さあ、次の一歩を踏み出そう!次のアクションプラン
記事を読んで「なるほど」で終わらせては意味がありません。早速、以下の3つのアクションを始めてみましょう。
(1)自社の決算書(2期分)と試算表(直近月)を手元に用意する
まずは自社の現状を客観的に把握することからスタートです。
数字のどこが強みで、どこが弱みかを確認しましょう。
(2)顧問税理士に連絡し「資金繰り表の雛形」をもらう
専門家の力を借りるのが一番の近道です。
融資を検討している旨を伝え、必要なサポートを依頼しましょう。
(3)この記事の「加点資料3選」を参考に、資料の準備を始める
いきなり完璧なものは作れません。
まずは契約書をファイルにまとめたり、資金繰り表に分かる範囲で数字を埋めたりすることから始めてみてください。
追加融資の交渉は、自社の過去を誠実に報告し、未来を具体的に語る絶好の機会です。
準備を万端に整えれば、それは決して怖いものではありません。
この記事が、あなたの会社の未来を切り拓く一助となれば、これほど嬉しいことはありません。
資金繰りが厳しく、資金調達の準備が必要、自社に合った融資制度を知りたい、
手続きが難しそうで進める自信がないなど
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